投資情報のベストな捉え方
日経平均が3万円に乗せたことを受け、暴落を懸念する声が高まっています。
しかし、そこにどのような根拠があるのでしょう……私には疑問です。
毎月第1週は定点観測。3月1日の放送では、先月につづいて強気の姿勢を紹介しながら、8銘柄の定点観測を行いました。個別銘柄の状況は、どうなっているのか?
映像は、「YouTubeチャンネル「マーケット・スクランブル」」でご覧ください。
コロナバブルが弾けた? ~上げ相場がまだ終わらない理由
日経平均「3万円」の意味
番組でもコメントしたとおり、現在の日本の株式市場について、暴落を警戒する必要は全くないと考えています。
「バブルか、バブルでないか」という論点で、新聞記事やテレビ番組が作られていますが、そんな議論をする根拠が存在しないと思うのです。市場全体のPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)も特別に大きな数字ではなく、むしろ割安ともいえます。
根拠を実感できないバブル論や暴落説に対して必死に反論するのもむなしいので、あまりやりたくありません。私が目先も強気の姿勢でいる根拠は、個別銘柄の騰落状況です。番組をなぞるかたちで次項で述べることにして、ここでは「なぜ下げを懸念する声があるのか」を考えてみましょう。
上げ下げがあるのが相場なので、そもそも下げを極端に怖がる必要はありません。
個人投資家は売買に特別な制約を受けないので、持ち株を減らす(キャッシュポジションを高める)ことで下げによる被害を軽減できます。手持ち株をゼロにしてもいいし、下げで利益が出るカラ売りを積極的に仕掛ける選択肢だってあるのです。
では、下げ相場を悲観するだけでなく、上げ相場の最中に決まって暴落説がささやかれる理由は? 少しひねくれた観点を紹介します。
ウケのいい相場情報をつくるには、最も厚い層を狙うのが正解です。平均ではなく分布が厚い層、すなわち、常にヤラレ玉を抱えていて「上がってくれ~」と願っている投資家層です。
だから、下げた日には「先物売り」とか「利食い売りで反落」といった決まり文句で、まるで「下がってゴメンね」と言わんばかりの表現を使います。株価を支える約束でもしていたかのように……。下げの解説では、「機関投資家の持ち高調整」なんて表現も決まり文句のひとつですが、機関投資家はそれほど機敏に持ち高を調整したりしません。
「日経平均3万円」が特に意味のある節目ではないのですが、ちょっとザンネンな投資家の傾向として、常に不安で外部に正解を求めるということが挙げられます。そんな気持ちに迎合するには、「3万円」というキリのいい数字が絶好の材料(エサ)なのです。「日経平均3万円、これからどうなる」と書けば、多くの人が読んでくれます。
個別銘柄の状況は熱くない
昨年いらい上昇している個別銘柄は、意外と限定的です。
例えば、最も顕著に上がっている銘柄のひとつは、次に示すソフトバンクグループ(9984)です。
コロナショックの安値から3倍になっていますが、すっ飛ぶような上げ方をしている期間はありません。また、十分な上げの日柄を経て「こんどは下げか?」と思わせながらも下げず、再び上昇がスタートするのです。この手の銘柄がそろそろ上げ止まってきた可能性はありますが、現時点ではカラ売りで取れている状況にありません。
そして、これまで動きのなかった銘柄も物色されはじめました。
例えば、次に示すテイクアンドギヴ・ニーズ(4331)です。
ウエディング事業がメインなので、コロナ禍で大きく売られました。そして、1年近くも安値を這っていました。それが、2月になって動いてきたのです。売り上げは以前の数分の1に落ち、赤字予想はそのまま、無配転落という状況ですが、突然に人気を集めたのです。元来しっかりと利益を出している会社ですが、「アフターコロナ」をキーワードとする急回復の期待が“あと出しの材料”なのでしょう。
ただ、こういった動きをみせているのは、まだ一部分の銘柄にとどまっています。
個別株の騰落を見ると、いわゆる「食い散らかした感」など全くありません。むしろ、多くの市場参加者が、上げに乗れずにイラついている空気が漂っていると思います。
買いたいのに買えない、下げてほしい──いわゆる「買いたい弱気」に迎合する意味でも、暴落論はウケるのかもしれません。
相場の上げ下げと参加者心理
相場は「まだ過熱していない」と述べましたが、そんなことを言っているうちに物色対象がジワッと広がり、いつのまにか上げのエネルギーが弱まっていたりするのも相場の現実です。
ひと月前、2月1日の放送で、私は強気を述べました。そして、とりあえず当たっています。でも、弱気から強気に転換する市場参加者が増えたあと、上げを予見した者が天井を見極められるのかというと、そんなこともありません。逆に、熱くなって冷静さを失うかもしれません。
上げ相場は、買い方がつくります。上昇の見込みを立てて参加者が増えることで株価が上がり、それを見て次の参加者が集まる──こういう図式です。では、下げ相場は売り方(下げを見込んでカラ売りを仕掛ける向き)がつくるのかというと、そうではなく、買い方が増加するペースが落ちることで上がらなくなり、ちょっとしたきっかけで下げはじめます。そして、それを見た買い方の投げが、下げを加速させるのです。
いくら経験があっても、感情をもつ人間である以上、心が熱くなってしまうものです。昨今は、心理学的な考察によるプロスペクト理論なども知識として身近ですが、理屈を知ったからといって、行動スタイルを理想に近づけることは難しいものです。
この問題は、相場の永遠のテーマです。
だからこそ、ちまたの情報に安易に飛びつかないことが大切です。かるいノリで正解さがしをしないよう、常に気をつけたいのです。
「売り」と「買い」だけじゃない
私が相当な“当たり屋”だったとしても、ずっと相場を当てつづけることは不可能です。だから、とりあえず当たっているといっても、「では、オレも買おうか」と反応してはいけません。
今回、暴落説を否定することで伝えたかったのは、無責任な情報が多い現実と、自らの意思をもって売買することの大切さです。
私の強気論に確信をもって同調するなら問題ありませんが、安易に飛びつかないことです。上か下か、買いか売りか……二択を当てるのが相場ではありません。「わからないからポジションを取らない」というのも、とても重要な選択肢だと認識してください。
「決めかねるけど、どちらかというと買い目線」くらいの感覚で、試し玉だけを維持する、なんて取り組み方もあります。
ちなみに、番組で紹介している「中源線」は、トレンドを機械的に判断して3分割の売買まで示してくれますが、きわめてシンプルなルールは、利用者のアレンジを可能にしています。いえ、可能どころか、率先して「自分の道具として使う」ことを促しています。
観点や基準が定まらない銘柄情報を疑い、経済記者が示す観点に左右されることもなく、感じるままに売買する、自分が思っているとおりにポジションを動かすのが相場です。そのための基本形はなにか──そんな考察をしてみてください。
来週3月8日は、テーマ別の番組、「押し目を待つか、ここから攻めるか ~これから買える銘柄」というタイトルでお送りします。お楽しみに!
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