新刊の内容を公開(2) | 林知之


現在「予約受付中」の新刊です。

とてもかるいノリのタイトルですが、中身は地味で丁寧、林投資研究所が30年以上も続けている低位株投資の手法「FAI投資法」の教科書として、実践的な説明を全力で盛り込みました。

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本日は、序章から抜粋した内容を、このブログで公開します。
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◎7億円を手にした男

ある男が、1,000万円の資金を5年で7億円にした。高いレバレッジを効かせた短期売買ではなく、地味な現物株投資を実践した結果だ。

この男は、大阪のとある団体で資金運用の方法を学んだ。それまで20年近くも株式投資をして全く成果が上がらなかったのだが、新しく学んだ投資手法で60銘柄ほどを手がけた結果、1銘柄も損をせず、地道な現物投資の繰り返しだけで驚異的な数字を達成したのである。

この投資手法は、1958年~60年ごろ、あるユダヤ人とその団体に所属する数人が、日本の株式市場を3年がかりで徹底的に分析して開発したのが始まりといわれるが、このあたりのことはハッキリしないし、そんな“衣”はどうでもいい。団体に所属する大勢の人が、実際に株式投資で大きな成果を上げた、というところが重要なのである。

記録では、16年間に売買した138人中、資産1億円を達成した人が71人(51.45%)、その中で10億円を達成した人が11人(7.97%)。当初の資金には個人差があったが、最低は100万円、多い人でも2,000万円程度だったというから、驚異的な数字である。

売買したメンバーのうち、1億円達成者71名以外は途中で脱落した。2名が亡くなったので、実際の脱落者は65人である。1億円達成の数字は驚くべきものだが、脱落者も非常に多いわけだ。

この手法こそ、本書で解説する「FAI投資法」なのである。ではFAI投資法とは、それほどつらく苦しいものなのだろうか。
否! 売買のルール、とくに「銘柄選定のルール」が確立されており、誰でもカンタンに実行できる投資手法である。

個人的な売買能力(技能)は、それほど要求されない。といっても、最後は個人の対応力で成否が決まるのだが、やさしい売買法を実践するうちに、自然に個人的な能力が身につく、ムダのない筋道が最初から示されているという特徴がある。

では、その団体で65人が脱落した理由は、いったいなにか。

脱落の原因は、ふたつに分かれる。ひとつは精神的なものである。
売買を続けるうちに、資金が着実に増えていく。高度な売買技術が身についた実感がないのに資金の増え方が急激だったせいだろうか、ノイローゼになる人が多かったという。

この話を聞いて「自分は大丈夫だ」と考える人が多い。だが、実際に億単位のカネを持ったことを想像してもらいたい。年齢が高いほど、また守るべきものが多い人ほど、順調に増える投資資金が根拠のない不安を生み、次第に増幅していくものだ。

さて、脱落のもうひとつの原因は、売買そのものである。
きちんとした売買を実行すれば、自分の意思に関係なく売買を手控えざるを得ないときがある。相場が相手である以上、当然のことだ。

実際にFAIクラブ(後述)でも、1989年から2000年まで買い銘柄を選定しなかった。この時は「大きな下げ相場だ」と判断し、それが見事に当たったのだが、相場環境によっては注目すべき銘柄が絶対的に少なくなることがある。そういうときに、物足りなさから余計な売買に手を出して自滅していった、ということである。

売買の頻度が高い方法は──そもそも「方法」として適正なのか、という疑問はあるが─攻めすぎて、いつか“ドボン”する。出動のチャンスを絞る手堅い方法は、その真の価値を理解する前に守備範囲を逸脱して迷走する……。この業界の、構造のようなものだ。

・カネを儲ける前に、カネを持てる器量をつくる
・自分の決めたことを徹底的に継続して守る

陳腐な精神論に聞こえるかもしれないが、大切なことである。

◎倍化する銘柄を選定する投資法

FAI投資法は、低位株を対象とする。ただ単に値の安い銘柄を対象とするのではなく、選んだ銘柄がまずは2倍になることを目標とする手法である。この場合の「手法」とは、売買法というより、銘柄選別法といったほうが正確である(もちろん、売買法もきちんとルールによって確立されている)。

東証一部銘柄から銀行、ガス、電力を除いた全銘柄を、価格帯によって3つに分ける(高いほうから値がさ株、中位株、低位株)。この低位株から、ラクに2倍になりそうな銘柄を選定して売買するのだ。

低位株の有利さは、1)下げにくい、2)上昇したときの効率がよい、3)心理的に買いやすい、ことである。一方で、数多くの銘柄の中で安値に放置されている理由があるわけで、倒産する銘柄は低位株から出るものだ。倒産しないまでも、安値の保合が長引けば気持ちを持続できないし、そもそも投資効率がわるい。この欠点を補って長所だけを引き出すのが、FAI投資法で規定された29項目のルールである。

選定メンバー(後述)全員が規定の月足チャートとファンダメンタルの資料(データスリップという)を使い、系統立ってまとめられたルールによって銘柄を絞っていく。多くの人間が同じ物差し(基準)をもって議論することで、相場で最大の敵である「独善性」を廃し、間違いのない答えを導き出す。そして、実践を通じて正しい感覚を蓄積することが、将来への道をつくっていくのだ。

ちなみに、将来の高値は予測不能、かつ予測者の努力が及ばない。だから、投資関連情報の「目標株価」なんて、無責任でバカバカしい限りだが、安全性確保のために「ラクに倍化するものを選ぶ」ことは、実践者として当然だ。「最低でも2倍」という銘柄選定基準を明確にする意味で便宜的に「目標」と定め、本書でもそう表現する。

(新刊『東証1部24銘柄でらくらく2倍の低位株選別投資術』序章「概要」より)

林 知之 著
A5判並製/208ページ
1,600円+税(1,728円)
発行:マイルストーンズ/発売:丸善出版

  • 序章 概要
    過半数を億トレーダーに導いた化け物
  • 1章 基本
    月足観測をもとにした現物投資の王道
  • 2章 規定
    実践者の感覚を重視した29のルール
  • 3章 実践
    初心者でもマネできるバスケット投資術
  • 4章 実績
    低位株選別投資の実力を徹底検証

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