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最近は「バイアス」という言葉がときどき使われます。正式には「認知バイアス」というのですが、「偏り」を意味し、要するに「人が陥りやすい誤り」です。
例えば先進諸国でも、事件の目撃者の証言はかなりの確率で間違っているといわれています。「虚偽記憶」ですね。
新しいものに直面しても以前の考えにとらわれたままでいる「保守性」といったものも、人間ならではのバイアスでしょう。
2003年に起きた韓国の地下鉄火災では、200人もの尊い命が失われましたが、煙が充満する社内に静かに座っている乗客たちの写真が公開されて話題となりました。
経験のない事態に対してスイッチが入らず「大丈夫だ」と考えてしまう「正常性バイアス」や、迷いながらも周囲と同じ行動を取ろうとする「多数派(集団)同調バイアス」といった心理作用があったのだと解説されています。
トレードでも、いや、トレードだからこそ、実践者にたくさんのバイアスが働いているはずです。
冷静に経済行為を進めているとも説明できるでしょうが、金融マーケットで日々起きていることは、異常事態の連続といえます。
大きな期待を抱きながらも、それ以上の不安や恐怖が継続的なストレスとして重くのしかかります。
考える時間が十分にあるようでいて、「明日の価格」という最も知りたい答えには一切近づくことなく決断の時がやってくるのです。
トレーダーの心理作用を専門的に説明する人は多いので、ここではベタな事例を挙げて解説します。「様子見」という言葉がよく使われるのですが、実はこの単語、ひじょ~にキケンです!
一般的なトレーダーが「様子見」と使う場合、つまり、トレード仲間に対して、担当の証券マンに対して、あるいは自分自身に対して言うときは、決まってポジションを持っています。
しかも、そのポジションに「不安」を抱えているときなのです。
不安だ……でも、まだ損切りを決断するのは早い、いや、損切りしたくない……もう少し待とう……「様子見する!」という具合です。
ポジションがゼロ、あるいは極端に少ない状況で「特別な行動は取らない」というのなら「様子見」で正しいのですが、ポジションを持っていて不安があるのですから、ツナギもしない、減らすこともしないという現状維持は「様子見」ではなく、「このままのポジションを継続する」という確固たる決断です。
それなのに、逃避と先送りを正当化するために「様子見だ」とつぶやくのです。
キケンです。
この「様子見」という便利な言葉を最初に使ったのが、市況解説なのか、とりあえず顧客を黙らせようとした証券マンなのかはわかりませんが、いつの間にか多くのトレーダーが“秘密兵器”として使っているわけです。
上記の文章は、新刊『ブレない投資手法 曲げない投資哲学』の一節です。
投資は迷いと決断の連続。
「手法をもとう」「軸をつくろう」「自分の哲学を確立しよう」
こう考えているはずなのに、雑多な情報にまどわされる、
つい計画外の行動に走ってしまう……。
だったら、
ガッツリと『根底の考え方』を見直してみよう、
『おカネとはなにか』をもう一度考えてみよう・・・
これが、マジメな個人投資家に向けた、林投資研究所からのメッセージです。
「基本書」だからこそ、
プロも納得する高い視点で書き下ろしました。
新刊では、行動の土台となるプロの投資哲学を、
「起」「承」「転」「結」
4つの章に分けてまとめています。