・2つのアメリカ | 矢口新

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☆2つのアメリカ

先日の彼岸で帰省した時、何人かの友達と飲んだ。全員が70歳で、健康な者もいれば、持病を抱えた者もいる。全員が何らかの趣味の世界に生きているが、もう一花咲かせたいと言う者もいれば、フェードアウェイだけだと言う者もいる。人はそれぞれだが、故郷の街は明らかにフェードアウェイしつつあった。

帰省する度に充実してきているのは道路で、近隣の街は確かに近くなった。今回は海沿い(街外れ)に新しい大橋が完成していたので、南西の街から北東の街に行くのに、故郷の市街地を素通りできるようになった。トラック輸送には便利になり、市街も静かにはなったが、街は明らかに更に寂れた。

日本各地で下水道の老朽化が問題視されているが、高齢化が進む故郷の街には下水道はなく、近隣にある更なる過疎地で今後問題になるのは上水道や電線網だとも言われている。太陽光発電には切実な需要があるようだ。

識者やメディアがもてはやすグローバル化で、日本の多くの地方都市は寂れた。グローバル化は無差別級のバトルロワイアルでもあるので、大資本には勝てなかったのだ。バトルロワイアルにもルールがあるのだが、そのルールは規制緩和でどんどん何でもありになってきた。資本力による弱肉強食が正当化され、価値観までそれに従わされるようになってきた。

そうした弱肉強食は米国が主導してきたのだが、その米国内部でも、日本の都会と地方のようなことが起きている。


米国は合衆国とあるように、いわば自治共和国が集まった連邦国家だ。それで米国政府は、連邦政府とも呼ばれている。合衆国としてはいわゆる世界一なのだが、各州を見ると大きなバラツキがある。

例えば、2023年時点の一人当たりGDPの上位5州は、ワシントンDC、ニューヨーク州、マサチューセッツ州、ワシントン州、カリフォルニア州の順で、数値はそれぞれ、25万9954ドル、11万0980ドル、10万5164ドル、10万3402ドル、9万9329ドルだった。つまり、上位5州の中ですら2.5倍以上の格差がある。

下位5州は小さい方から順に、ミシシッピ州、ウェストバージニア州、アーカンソー州、アラバマ州、サウスカロライナ州で、一人当たりGDPはそれぞれ、5万1416ドル、5万7711ドル、5万8221ドル、5万9692ドル、6万0932ドルとなっている。つまり、最上位と最下位の差は5倍以上もあるのだ。

上位の諸州はいずれも東北部と西部の沿岸諸州で、下位は中南部の諸州だ。下位の諸州は、ウェストバージニア州以外は南北戦争の敗者だが、かつては豊かな米国を支えてきた諸州だった。ちなみに、バージニア州は南部連合に加盟したが、山岳地帯のためにプランテーション農業が発達していなかった州西部地域の住民は離脱して独自の州政府を樹立、南北戦争中にウェストバージニア州がアメリカ合衆国の35番目の州として正式に成立した。

これらの州はまた、民主党支持と共和党支持にも分かれている。民主党の支持基盤は概ね東北部と西部の沿岸諸州、富裕州、女性、高学歴で、共和党支持は概ね中南部諸州、貧困州、男性、低学歴、白人となっている。

象徴的に東部ニューヨーク州ナッソー郡と、南部テキサス州スター郡を比較すると、前者は高卒の資格を持たない成人が8.2%なのに対し、後者は39.1%。家計所得中央値は13万7709ドル対、3万5979ドル。貧困率は5.4%対、33.5%だ。トランプ大統領のコアな支持層はプアホワイトの男性たちなのだ。

前回の大統領選ではそうした貧富格差を反映して、ハリス陣営の選挙費用はトランプ陣営の1.7倍以上もあった。ハリス陣営が最も多く支出したのは広告宣伝費、メディア対策費で、選挙中のみならず選挙後も続いているメディアのトランプ叩きは、そうした影響も否定できない。

一方で、トランプ大統領のメディア叩きや、大学補助金の削減は、言論の自由や教育軽視だと言われている。とはいえ、イスラエルのガザ住民虐殺で判明したのは、バイデン政権下の大学でも言論の自由が封じられ、イスラエルの行動を正当化するように教育機関が歪められたことだ。つまり、政治とカネの関係を認める限り、民主主義は建前だけで、本質は資金力が支配する金権政治になっていく。

その意味では、プアホワイトが支持するトランプ大統領が、劣勢な資金力でも勝利したことは評価に値することでもあるのだ。メディアはそれを大衆迎合主義だと貶めるのだが。


グローバル化は資本力による弱肉強食の正当化でもあった。それを主導した米国はそれなりの繁栄を謳歌してきたが、それでも国内の貧富格差は拡大した。トランプ政権の支持基盤はグローバル化や国際貿易そのものを疑っている。何故なら、彼らは繁栄から取り残され、明らかに貧しくなってきたからだ。

関税政策でインフレと不況が同時に来て(スタグフレーション)、米国人の生活は更に厳しくなると言われても、これ以上の悪化があるとは信じられないほど追い詰められている人たちがいる。後はどうにでもなれと、開き直るしかないのだ。

グローバル化で世界は豊かになったとされる。しかし、豊かになった米国内でさえ、格差は拡大した。一方、日本はむしろ貧しくなった上に、国内格差も拡大したのだ。私の故郷を見ていると、トランプ支持者の気持ちがよく分かる。

私は、グローバル化の恩恵を受けた日本人は極めて少数派ではないかと疑っている。少なくとも、グローバル化のもとで経済成長が事実上止まり、競争力が1位から38位にまで低下した日本が、トランプ大統領が主導する本当の「チェンジ」を過度に恐れる必要はないのではないかと思っている。

 

 


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