・国際協調路線と新モンロー主義 | 矢口新

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☆国際協調路線と新モンロー主義

米国の外交政策には2つの相反する路線があると言われている。1つがモンロー主義と呼ばれる孤立路線で、もう1つが国際協調路線だ。


南北米大陸は新大陸と呼ばれていたように、旧大陸諸国の植民地だった。1607年、英国は北米大陸の東海岸、現在のバージニア州に、最初の恒久的植民地としてジェームズタウンを設立した。

旧大陸では1648年に締結されたウェストファリア条約によって、国家間の関係が根本的に変えられ、近代国際社会の基礎が築かれた。

ウェストファリア体制とは、主権国家体制の確立で、各国が自国の領土内で絶対的な権力を持つ主権国家として認められた。同時に、他国の内政への不干渉が原則とされ、国家間の平等性が確立された。また、国家の宗教と国民の宗教が必ずしも一致する必要がなくなり、宗教的寛容の基盤が築かれるなど、現代の国際社会にも通じる基本的な原則となった。もっともそれは欧州国家間の体制で、その他の地域は欧州諸国の植民地の対象でしかなかった。

18世紀にかけて、英国は北米東海岸に13の植民地を建設した。1775年にこれらの植民地と英国との間で始まった内戦が、1776年のトーマス・ジェファーソンらによる独立宣言でウェストファリア体制での主権国家の地位を固める独立戦争となり、13州からなるアメリカ合衆国が成立した。

1781年のヨークタウンの戦いの後は、独立軍優勢のまま大規模な戦闘は起こらず、1783にパリで締結されたパリ条約によって英国はアメリカ合衆国の独立を承認し、戦争は終結した。

その後、アメリカ合衆国は時間をかけて原住民やフランス、メキシコなどから領地を獲得する形で、現在の50州となった。ちなみに、米国旗である星条旗(Stars and Stripes)は、星の数で現在の50州を表し、帯は建国時の13州を表している。

モンロー主義とは、1823年に第5代大統領ジェームズ・モンローが、新大陸の盟主としてのアメリカ合衆国が欧州諸国と米大陸の相互不干渉を提唱したもので、ヨーロッパ列強の介入を阻止しつつ、ラテンアメリカ諸国の独立運動を支援した。それにより、米国による北米大陸での勢力拡大や、中南米への介入を正当化した路線だった。


一方の国際協調路線は、現在の我々にも馴染みが深い。米国が世界のリーダーとして国際連盟や国際連合、WTOやWHO、IMFや世界銀行などの国際機関を主導するものだ。また、G7、G20などの国家の寄り合い、NATOや日米安全保障条約などの軍事条約、パリ協定などの国際的な構想にも積極的に関与する。加えて、世界の警察として、人道的な理由から他国の内政に介入するようなことも行うものだ。

米国がグローバリゼーションを主導してきたように、第一次世界大戦後の米国の外交政策は基本的に国際協調路線で、バイデン前大統領もそれを踏襲してきた。

国際協調路線は米国が主導してきたので、その恩恵を最も受けることができ、米国は世界最大のスーパーパワーとして栄えてきた。しかし、世界一の旺盛な国内需要を満たすためには国内だけの生産では追いつかず、恒常的に貿易収支が赤字となった。また、一部の成功者らに巨大な富が蓄積できる税制を取り続けたために歳入が不足し、財政収支も赤字となった。そうした巨額の双子の累積赤字を賄うための債務も巨額となり、政府の弱体化が進むようになった。

一方で、国際協調路線で利益を得るのは国際社会であって米国ではないという建前が、相次ぐ機密文書の公開や、メディアやウィキリークスなどの暴露により崩れてきた。その結果、国際協調路線への懐疑が米国の内外で広まり、米国政府への支持が大きく低下した。

対外的な1例としては、人道的な国際法違反を糾弾するとして2022年以降強化した「ロシア制裁」に参加した国は米国との同盟関係を結ぶ諸国が中心で、中立国の多くが従わなかった。のみならず、制裁対象のロシアが中国と主導するBRICSは2024年に倍増し、2025年にはインドネシアも加わった。これはバイデン政権までの国際協調路線が事実上崩壊していることを意味した。

対内的には、成功者らに極端な富の蓄積を認める税制と、それに伴う政府の恒常的な歳入不足がもたらす行政サービスの低下が、国民の大多数が支えているはずの政府への不信を高めることになった。それがひいては民主主義や国際協調路線への懐疑をも産むこととなり、「新モンロー主義」を唱えるトランプ大統領の誕生に繋がった。そのトランプ政権は、米国を孤立させ、再び偉大にすることを狙っている。

オリジナルなモンロー主義は、南北両米大陸への勢力拡大を図る米政府の意向を正当化するために、列強諸国から孤立する政策だった。

新モンロー主義は、米国がかつての栄光を取り戻し、一般の勤勉な米国人たちがプアホワイトなどと蔑まれることなく、明るい未来を信じて生きられるような社会に戻すことだ。米国には国際協調路線などと建前と本音と使い分ける余裕などなく、米国再生のためには孤立をも厭わないとする政策だと言える。

トランプ政権は世界をデストピアに導くという見方がある。しかし、ウクライナやガザが象徴しているのは、バイデン政権こそが世界をデストピアに導いてきたという事実だ。ウクライナ支援を続行すると明言している各国は認めたくないかも知れないが、新にBRICSに加盟した国々はバイデン米国を見切ったのだ。また、トランプ米国も同様に、バイデン米国からの方向転換を図っているのだと言っていいのではないか。

 

 


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