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☆民主主義の危機、政治的傭兵部隊、下剋上の種
民主主義と多様性は切り離せない。何故なら、主権となる一般国民は年齢、性別、体格体型、能力、思想、宗教、人種、価値観など、本来的に多様なものだからだ。また、民主主義の課題とされる多数決の危険性でさえ、「多数の意見が常に正しいとは限らない」、つまり「少数派の意見も尊重すべき」と、多様性を支持するところから来ている。
ところが、民主主義を代表する国の1つである米国のトランプ大統領は多様性に冷淡だ。また、合理的な事業家の同氏が、連邦政府の財政立て直しに大鉈を振るうに際して新設した政府効率化省(DOGE:Department of Government Efficiency)のトップに据えた、世界で最も成功している事業家の1人マスク氏もまた多様性に冷淡だ。そして、彼らが主導する米政府効率化によって、民主主義が破壊されつつあると言える。
英米メディアによれば、マスク氏は自身が経営する企業群の従業員、元従業員らで結成した部隊を率いて、米連邦政府機構を改変し、220万人の職員を支配する権限を手に入れた。
DOGE主導の退職勧奨に応じた連邦政府職員は2月26日時点の報道では7万5000人に達している。CIAも全職員に対して早期退職割増金を提案した。また、内国歳入庁や森林局などで試用期間中の職員を対象に最大22万人におよぶ大量解雇が行われている。
そのことに関してはトランプ政権内での対立も表面化した。ルビオ国務長官、ダフィー運輸長官、コリンズ退役軍人省長官らが、6日の閣議でマスク氏と言い争ったと報じられたのだ。トランプ氏はマスク氏の権限は各省庁への「勧告」に留まるとの認識を示し、その場を収めたという。
とはいえ、マスク氏の権限が各省庁への「勧告」に留まっている形跡はない。事実は、選挙で選ばれたわけではない民間人が、世界の覇権国内に新たな巨大権力を築き上げている。それでもトランプ大統領はイーロン・マスク長官を解任できるが、世界一の大富豪マスク氏が既に握っているこうした「力」は強大で、両者が対立すれば大きな軋轢を産みそうだ。
民間人に国家の主要な活動を任せるという意味では、ロシアの民間傭兵部隊だったワグネルと重なる部分がある。ワグネル・グループは2014年以降のウクライナ内戦や、シリア内戦、アフリカにおける複数の内戦等において、ロシア政府の「裏部隊」としてその権益維持のために活動していたからだ。
ウキペディアによれば、ワグネルはウクライナで武装勢力がクーデターを起こし、親ロの大統領を追放、親米政権を設立した2014年に、独立を表明した東部諸州を支援するために結成された。とはいえ、2014年から2022年までのワグネルの活動実績への不満がロシア連邦軍にあった一方で、22年の侵攻後の正規軍も目立った活動実績を挙げられなかったことから、ワグネルと正規軍とには相互不信があった。そこに、米国からの調略の可能性もあり、2023年6月、ワグネルの代表プリゴジン氏は反ロシア政府武装蜂起を宣言した。
この反乱はロシア軍の弱体化を産んだものの、ほぼ即座に鎮圧された。それはプーチン大統領がブリゴジン氏を当初から政権中枢に入れず、終始部外者扱いしていたからだ。また、こうした反乱は外国勢力の支持や後ろ盾を期待するものだが、ブリゴジン氏への支持表明をする国は遂に現れなかった。
一方、トランプ大統領は民間人のマスク氏を政権の中枢どころか、政府の基本的な組織系統を集中的に掌握する立場に据えた。
マスク氏の実働部隊を率いるのは、テクノロジーに精通した若い「ハッカー」たちだと報じられている。米連邦政府の人事記録から機密性の非常に高い財務データまで、あらゆる情報を保管する連邦システムに前例のないアクセス権を持っているとされる。彼らは手始めにGSAと連邦人事管理局(OPM)のコンピューターシステムを押さえ、OPMからは政府職員宛てに早期退職勧告の電子メールが送付された一方で、プロバー職員らがシステムにアクセスするのを禁止した。
また、マスク氏の部隊は各省庁のために毎年6兆ドル余りを送金し、納税情報や社会保障給付などの対象者の個人情報が含まれている財務省の支払いシステムにもアクセスしている。このことは「連邦政府の支払いが選別できるようになってしまう」との懸念を産んだ。
また、マスク氏の部隊は米国の対外援助を管轄する国際開発局(USAID)本部の重要情報へのアクセスを巡って安全保障当局と衝突し、同局を「閉鎖する」と表明した。
とはいえ、DOGEは期間限定の組織で正式な省庁とは言えず、マスク氏は政府から給与をもらっていない。同省の人員構成もはっきりしない。トランプ政権は同省の職員名簿を公表しておらず、職員の給与や各機関の人数も不明だ。こうした不透明な実態ゆえに、野党民主党議員などはマスク氏が政府に敵対的買収を仕掛けたと非難、公務員労組は同氏による重要なコンピューターシステムへのアクセス禁止を求める訴訟を起こした。
民間人がDOGEのスタッフとして連邦政府のデータベースを根こそぎ漁っているのであれば、憲法上重大な疑義が生じ、サイバーセキュリティプロトコル違反に相当する可能性があると言われている。
また、問題とされているのはマスク氏がDOGEの影響力を利用して自身の企業に直接利益をもたらす「利益相反」を問われる立場にあることだ。マスク氏は電気自動車メーカーのテスラに加え、宇宙事業のスペースX、ソーシャルメディアのX(旧ツイッター)、脳インプラント開発会社のニューラリンク、トンネル掘削会社ボーリングカンパニー、人工知能スタートアップのxAIを経営している。
マスクは自身の利益相反の可能性について、第三者の監視を受けるのではなく、自主的に報告するよう求められるという。
DOGEはNASAの縮小も画策し、宇宙開発の民間委託を進めることになるが、それは事実上、スペースXのビジネスが拡大することを意味する。また、スペースXを管轄する連邦航空局や、テスラを監督する国家道路交通安全局、全米労働関係委員会などもDOGEによる効率化の対象に含まれている。
一方で、マスク氏は長年にわたって中国共産党の指導者たちと親密な関係を築いており、テスラは他のメーカーには義務づけられている現地企業との合弁要件を免除され、単独で工場を所有・運営することを許されている。2024年はテスラの販売が各国で低迷する中で、成長を遂げた唯一の市場が中国だったが、1台平均約2000ドルと言われている中国政府からの補助金が大きな要因だった。
さらに、中国政府は、カリフォルニア州の制度を模倣した排出権取引からも、テスラに追加の収益をもたらしている。テスラが黒字化するまで、マスク氏は破産寸前の危機にも直面した。中国政府なくして今のイーロン・マスク氏は存在しないとも言えるのだ。
グローバル企業は税率の有利な国に本社を置くなど、無国籍な傾向を持つ。また、マスク氏の出生国南アフリカは、BRICSのメンバーだ。英米メディアが注目すべき点だと報じているのは、DOGEの活動は米国政府が常日ごろ非難している敵性国家の戦術と酷似しているということだ。
DOGEが真っ先に手を付けた米国の対外援助を管轄する国際開発局(USAID)の閉鎖は、同盟国の拡大を図る中国との戦いに後れを取ることも意味している。
第1期のトランプ大統領は、当初腹心や側近で固めていた政権幹部を次々と入れ替えていった。将来、マスク氏との蜜月が終わった時、トランプ氏がマスク氏を解任し、その強大な権力を手放すよう要求することは十分に考えられる。
その時、マスク氏は一般の民間人に戻るのだろうか。仮に、ワグネルにように反乱を考えたとしたら、トランプ氏や米政府のシステムで制御できるのだろうか?
現時点で、マスク氏は世界一の大富豪であり、世界の覇権国米政府で事実上最大の実権を握っている。加えて、中国政府とも非常に親密なのだ。
DOGEについては、さらに危機感を煽るコメントがある。極めて刺激的なので、要約せずに全文をそのまま引用する。
(引用ここから、URLまで)
政府効率化省(DOGE)に関するニュースに圧倒されているのは、あなただけではない。いまやDOGEがどの省庁を乗っ取ったかを把握するだけでも膨大な労力が必要だ。DOGEがそこで何をしているのかを追うことはなおのこと難しい。しかし、限られた時間と労力のなかでDOGEの最新の動向を理解するための重要なポイントがひとつある。事態はあなたが思っているよりもはるかに深刻、ということだ。
不透明な全貌
DOGEの動向を追うことは極めて困難である。これは意図的にそう設計されている。DOGEの誤りだらけの「削減額」を示す台帳以外の情報源はメディアの報道しかない。イーロン・マスクが約束した「最大限の透明性」は、全くあてにならないのだ。この不透明さの一因は、DOGEがあまりにも広範かつ素早く動いていることにもある。破壊の全貌を把握しようとするのは、解体現場に散乱したレンガを一つずつ数えようとするようなものだ。
例えば、ネット上で「Big Balls」と名乗る19歳のエドワード・コリスティンが、この一連の事態に何らかの役割を果たしていることはご存知かもしれない。これだけでも十分に不安を駆り立てられる話だ。しかし、コリスティンがその後、国内最高レベルのサイバーセキュリティ機関にかかわるようになったことは聞き逃してしまったかもしれない。
それだけではない。コリスティンは米国務省や連邦中小企業庁(SBA)にも関与し、国土安全保障省(DHS)のメールアドレスまでもっている。ちなみに彼は最近、ロシア人にDiscordサーバー向けのAIボットを販売する副業をしていたという。思っている以上に事態は深刻なことがわかるだろう。
問題は拡大し続けている
これらは過去の話に思えるかもしれないが、実際はいまもなお継続している問題である。Big Ballsとその仲間の20代の技術者たちは、毎日のように侵食を続けている(正確に言えば、全員が若いわけではない。なかには、近年では前例がないほど利害が対立する立場にある者もいる)。
米国際開発局(USAID)が実質的に機能を停止し、消費者金融保護庁(CFPB)が凍結状態にあるという話も耳にしたかもしれない。いずれも事実であり、状況はどれも極めて深刻である。
これが実際に意味することはこうだ。世界中でワクチンを受けられる人が1カ月前よりも減り、HIV/AIDSを抱えて生まれる赤ちゃんが増えることになる。さらに、これからは消費者が消費者金融業者や決済機能を兼ねたソーシャルメディア企業に搾取されても、守ってくれる頼れる機関はもうない。
それだけではない。DOGEが解雇した、いわゆる「試用期間中」の職員数千人のなかには、昇進や異動をしたばかりの経験豊富な労働者も相当数含まれていた。
全米科学財団(NSF)の人員削減に、国立衛生研究所(NIH)の助成金に上限を設ける案が合わせれば、米国の科学研究は今後長期間にわたり深刻な打撃を受けることになる。さらに、米農務省(USDA)での職員の解雇により、農家を支援するためのプログラムが混乱に陥っている。食品医薬品局(FDA)は水曜日、今年のインフルエンザワクチンの組成に関する指針を決める会議を中止した。次の開催日時は未定である。
必要な人材までも解雇
科学やワクチンに関心がない? こんな話もある。社会保障庁(SSA)は職員を半数に削減する予定だと報じられている。さらに、住宅都市開発省(HUD)では最大84%の人員削減が見込まれている。太平洋岸北西部の電力網を維持していた何百人もの労働者が解雇され、その後、急いで一部が再雇用された。国立公園局や内国歳入庁(IRS)も大きな打撃を受けている。
つまり、今後は期日通りに支払いを受けられることも、電気が問題なく使えることも、初めて住宅を購入することも、ヨセミテ国立公園で観光を楽しむことも、もはや保証されないかもしれないということだ。今日は問題なくても、明日もそうとは限らない。
DOGEが鳥インフルエンザの予防や米国の核兵器庫の管理に携わっていた人員を解雇したことも忘れてはならない(チェーンソーを振り回すように人員を削減すれば、必要なものまで削ぎ落としてしまうのだ)。
これらの機関は、解雇した労働者を再雇用しようと試みたと報じられている。それ自体はよい。しかし、たとえ再雇用がうまくいったとしても、「誰が残るのか?」という長期的な課題が残る。核兵器の管理方法を知る数少ない人材を誤って解雇するほど傲慢で無能な体制の下で、一体誰が働き続けたいと思うのだろうか? 『The Bulwark』の最近の記事によると、人材流出はすでに始まっている。
本格的な人員削減はこれから
それに本格的な人員削減は始まってもいない。政府はDOGEが改変した自動化ソフトウェアの力を借りて、公務員の大規模な一斉解雇を近いうちに実施しようとしている。米国政府は、多岐にわたる省庁に所属する職員のもつ数十年分の組織的知識を失おうとしている。政府に忠誠をもつ人たちであっても、こうした専門家や職員の代わりを務めることはできない。
イーロン・マスクは少なくともDOGEが誤りを犯すことを認め、迅速に修正することを約束していた。水曜日には、USAIDのエボラウイルスの蔓延を防ぐために設計されたプログラムを中止した件について言及している。「わたしたちは直ちにエボラウイルス対策を復活させました」と、トランプの初の閣僚会議で発言した。「何の中断もありません」
しかし、『The Washington Post』が最初に報じたように、実際はそうではなかった。エボラウイルス対策のプログラムは復活していないし、大幅に縮小されたままになっている。さらに、トランプ政権は2月26日、USAIDおよび国務省の約1万件に及ぶ案件や助成金を打ち切ると発表した。これらの案件の多くは、世界のどこかで生じている困難を少しでも軽減しようとするためのものだった。すべてを語るにはあまりに多くの悲劇が、手の届かない場所でいまもなお起き続けているのだ。
影響はどこまで広がるのか?
この事態の深刻さを想像しようとすると、海の深さに思いを巡らせたときのように圧倒されてしまう。事態が想像以上に深刻なのは、裁判所が対応するころには、すでに取り返しのつかない損害が発生しているからだ。政府の運営者たちは単に国家崩壊を見守るだけで、それ以上の使命感が見られない。これが状況をさらに悪化させている。
連邦政府の組織は、確かにもっと効率的に運営できるだろう。しかし、「効率化」が現実的な目標と言える段階はとうに過ぎてしまった。DOGEによる人員削減は、市民社会や機会費用を考慮した長期的な戦略的思考に根ざしたものではない。DOGEの目標は、イーロン・マスクとProject 2025が掲げている目標にすぎないのだ。そしてDOGEは政府の不正を何ひとつ見つけられなかった。見つかったのは不正ではなく、ただ機能している民主主義だけだった。そしてDOGEは、この民主主義が機能停止したらどうなるかを実験しているかのようだ。
これまでDOGEがやってきたことは、池の真ん中に大岩を投げ込むことだけだ。それだけでも十分に深刻だが、本当に恐ろしいのはその影響がどこまで広がるかである。
DOGEは、政府機関の職員の解雇を自動化するソフトウェアの開発を進めている。イーロン・マスク率いるDOGEの関係者は、国防総省が設計した「AutoRIF」というソフトウェアのコードに手を加えているという。このソフトウェアは、政府機関の職員の大規模解雇の支援に使えるものだと、情報筋は『WIRED』に語っている。
参照:DOGEによる米政府の乗っ取りは、想像を超える危機をもたらす
実は民主主義の危機は、それ以前から始まっている。コロナ対策だ。多くの病気はウイルスや細菌からもたらされる。そして、ほぼどんな病気でも多様な治療法があり、どの治療法が最も有効かは時代と共に変わってきた。それは今も進行中のことで、今日の常識が明日の常識であるとは限らない。
ところが、Covid-19と名づけられた新種のウイルスに対しては、誰もはっきりしたことは何も分からなかったにも関わらず、スウェーデンを除く各国は「短期決戦」を強要した。そして、多様な考え方は「危険」だとして罰せられた。
世界史や日本史を紐解けば、下が上を駆逐する「下剋上」は当たり前のように起きている。コロナ対策を機に、国民のデジタル支配を一気に進めた中国も、習近平主席や首脳部は現場のデジタル部隊を抑えきれるのだろうか? 民主主義を否定し、覇権を競う米中の内側に、「下剋上」の種はないのだろうか?
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