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☆米国の有権者たちは「おかしい？」
米国最古の雑誌である「サイエンティフィック・アメリカン」の編集長が、トランプ候補に投票した人たちは「ファシスト」だと呼び、辞任に追い込まれた。米国の有権者の大多数がファシストだという意味だったのだろうか？
米メディアには、「リベラルなサンフランシスコでさえ、トランプへの有権者シフトに巻き込まれる」などと言うものがあった。
ある日本のメディアには、トランプは「自由、人権、法の支配を守れるか」とあり、米国の有権者がトランプを支持した理由として、「気高い理念より明日の生活」というものもあった。
これらは、大多数に支持されているにも関わらず「大衆迎合主義」と呼ぶことと同様、どれもが米国の一般的な有権者たちを見下したような表現だが、正義は自分たちの側にあると信じている「一種の」インテリ層の見方を反映しているのだろう。
私もトランプは問題の多い人物だと見なしている。しかし、バイデン政権の正義や気高い理念よりは、「まだまし」かも知れないと見ている。何故なら、バイデン政権が続けばパレスチナ人やウクライナ人、ロシア人たちの死者が増え続ける可能性が高く、ハリス候補がそれを止められるとは思えなかったからだ。トランプでも止められるかどうかは分からないが、少なくともそう公約していた。また、米国が支援を止めれば、ウクライナとイスラエルは戦争を続けられない。
このように、権力が考える「正義や気高い理念」はしばしば危険なものだが、米大統領選ではメディアが権力に非常に近い存在であることが明らかとなった。ガザでの虐殺に武器を提供し、人道支援の妨害でイスラエルを告発している国連を抑え込んでいるバイデン政権に「正義や気高い理念」は最も似つかわしくない表現だからだ。
また、バイデン政権は米国人の「明日の生活」を脅かす内政だけでなく、ウクライナとイスラエル支援に偏重した外交を行ったために、米国の国際的な地位を著しく低下させた。中国とロシア、ロシアと北朝鮮の結束を強め、インドやトルコを中立化させ、サウジアラビアとＵＡＥ、エジプト、エチオピアを、イランと共にＢＲＩＣＳに参加させたからだ。これらの動きはすべてバイデン政権のロシア制裁以降に顕在化した。
加えて、米国のお膝元であるラテンアメリカ諸国の主要貿易相手が、メキシコとコロンビアを除き米国から中国に変わったのだ。また、中国政府はほとんどのラテンアメリカとカリブ海諸国を、米国を除外したインフラ整備プログラムに署名させた。ペルーではアジアとの貿易を加速させるための巨大港を開港させる。
以下のページの地図に見られるように、2023年の時点のラテンアメリカ諸国は真っ赤に染められている。
参照：How China Capitalized on U.S. Indifference in Latin America
米国自身の対中赤字も拡大を続け、中国2024年の貿易黒字は前年比16％増で、年間１兆ドルペースとなっている。バイデン政権は表向きの敵視とは裏腹に、結果的に中国を助けてきた。
米国は過去４年間、アフリカ外交でも数々の挫折を経験した。米国の影響力が衰退する一方で、中国やロシアとの同盟関係を強めているのはアフリカ諸国も同様なのだ。
参照：衰退する米国のアフリカ外交、トランプ氏復帰で一変か
日本のメディアを見ていると、中国やロシアが孤立を深めているような印象を受けるが、孤立しつつあるのは米国とその同盟国の方なのだ。これでも、米国の有権者たちは本当に「おかしい」のか？
米国民だけでなく、世界はトランプという横暴でモラルなき暴君とでも言うべき人物と向き合うことになるが、それでも米国の有権者たちは「まだまし」だと苦渋の選択をしたのではないだろうか？
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