・危機管理と狼少年 | 矢口新

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☆危機管理と狼少年

この8月、最寄りの小売店からコメが消えた。日本から主食が消えた主な理由は3つあると言われている。

1つは、8月は新米が出回る前なので、もともと1年間で最もコメの在庫が少なくなる時期だったこと。

2つめは、従来からの供給減や猛暑の影響で流通量が減ったことに加えて、思いのほかインバウンド消費が大きく23年産米の需給がひっ迫していたこと。

3つめは、南海トラフ地震に備えた警戒や台風の接近で、当局が災害に備えるように繰り返し促したことだ。それを受けて、消費者がコメを家庭内に買いだめした。当局者は災害に備える人が少なかったことに懸念を表明したが、それでもコメに関しては店頭から姿を消すまでに反応した。


しかし、農協などに玄米の在庫がなかったわけではないという。それにもかかわらず小売店からコメが消えたのは、折からの需要不足に応じて精米能力が低下していたことに加え、2024年に入って目立ち始めた物流能力の限界で供給できなかったからだと言われている。また、南海トラフ地震に備えた警戒情報や台風の接近も物流を妨げた。

つまり、供給能力の低下で、天災でもあればコメ不足になりかねないというギリギリの状態のところに、当局が天災を前もって煽ったために、コメ不足が実現したのだ。

とはいえ、9月になれば、新米の収穫が本格化する。小売店にもコメが出回るようになるが、大幅に値上がりしそうだ。

主要産地での2024年産の新米価格は前年比で2~4割引き上げられているという。折からの生産コストの上昇と、8月の「極端な需給逼迫」が要因だ。生産コストの上昇は主に世界的な需要増による肥料高と燃料高によるもので、共に円安の影響も大きい。例えば、新潟県の「コシヒカリ」は前年比22%高、北海道の「ゆめぴりか」は29%、秋田県の「あきたこまち」は39%高となったという。

一部の地域では7~8月に収穫された早場米がスーパー店頭に並んだというが、5キロ入りが3000円を超えるなど、昨年より3~4割高い水準になっているようだ。

家計消費に占める食料品の比率をエンゲル係数と言うが、2023年は29%を超え、過去最高水準となった。エネルギー費用も13%ほどあり、合わせて4割を優に超える。これらは生存のための必需品なので、その値上がりは他の消費支出を圧迫する。つまり、物価高は景気後退要因となるのだ。2024年になってもこれらのコストは上がり続けている。


危機が予測される時にはリスク管理が必要だ。警告を出し、避難勧告を行うことも場合によっては必要だろう。しかし、リスクばかりを強調すると生きていけなくなる。加えて、警告による弊害も大きい。

例えば、北朝鮮がミサイルを発射した時のように、どこに避難していいかも分からないのに、テレビで通常の番組を休止して長時間警告を出し続けたようなことがリスク管理と言えるのだろうか? 尋常でない警告に慌てて反応することで、パニックによる死傷者が出なかっただけでも幸いだった。

台風や線状降水帯は該当地域にとって目に見えた目前の危機だが、地政学的リスクや地震はどんなに危険でも、いつどこに来るか分からないという潜在的な危機だ。今回の南海トラフ地震に備えた警戒情報でも、地域によっては見えない危機のための備えとして交通網が1週間も寸断された。そして、交通網の寸断は多くの人々に大きな損失を与えた。こんなことが頻繁に繰り返されてはたまらない。

狼少年は、「狼が来た」と叫ぶと村人たちが大騒ぎするのが面白くて警告を繰り返した。結果は、誰も少年の警告を信じなくなり、少年は狼に食べられてしまう。

このところの当局による警告も、物価高や経済の停滞といった弊害を産んでいる。今の日本はリスクを強調し過ぎることで、かえってリスクに弱くなっているように思えるのだが。

ちなみに投資とは、何もしないでも起きる環境変化というリスクに対して、自分なりに何らかの対処を行うことだ。買って持ち続ける長期投資は、買った時点の環境が予測通りに変化することが前提で、予測からのズレがリスクとなる。ヘッジ(災害への備えや警告)は、コストは高いが、必ずしもリスクを抑えるとは限らない。ではどうするか?

環境の変化(価格の動き)に応じて、「対処し続ける」ことなのだ。リスク管理とは、対処の仕方を知り、それが実行できるように訓練することだ。環境の変化(価格の動き)に振り回されずに、適切に対処できれば収益に繋がる。環境変化に対するリスクヘッジとなるのだ。

 

 


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