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☆日銀が株価暴落の引き金を引いたのか?

日銀が7月31日の金融政策決定会合で0.25%への利上げを決めたことで、主要国の株式市場が混乱した。利上げ時期が市場予想よりも早かったこと、0.5%以上への利上げの可能性を否定しなかったこと、円安懸念にも言及したことで、日本株を1987年のブラックマンデー以来の下げ率に至らしめたともされ、その是非を問う声も聞かれた。

とはいえ、株式市場は7月10日過ぎから下げ始めており、日銀が暴落の「引き金」を引いたとは言えない。また、会合までの3週間ほどで最も下げていたのは米市場のフィラデルフィア半導体指数で、その時点での下げ率は日経平均の2倍以上もあった。

どうして、日銀の金融政策への「懸念」が、米国の半導体株の売りに繋がるのか? 

そのヒントは投機筋のドル円ポジションと、ドル円レート、フィラデルフィア半導体指数などの推移にある。ドル円のロングポジションは7月始めに事実上の過去最大のピークを付け、ドル円は1990年4月以来の高値を付け、フィラデルフィア半導体指数は7月11日に史上最高値を付けた。そして、ドル円ロングの急減と共に、ドル円もフィラデルフィア半導体指数も下げ続けた。また、米株や日本株を先導してきたのは半導体だったので、それらも売られた。そして、7月31日がやってきた。

これらを繋ぐものは、キャリトレードだ。超低金利の円を借り、高金利のドルを保有すると約5%の金利差が得られる。ドルを買うことで、ドル円のキャピタルゲインが得られる期待もあるが、そのドルで世界一熱い投資物件である半導体株を買えば、もっと大きなキャピタルゲインの期待が高まる。この思惑は7月前半までは完璧に機能していた。

5%の金利差、ドル円のキャピタルゲイン、半導体株のキャピタルゲインの3つを掛け合わせれば、多くのトレーダーやヘッジファンドにとっては、自己記録更新の巨大利益だったはずだ。

もっとも、そうした投機筋にも不安はあった。1つめは右を見ても左を見ても、同じようなトレードをする連中が大勢いたこと。2つめは同時期に行われる日米の金融政策決定会合で、金利差が縮小する可能性があったこと。3つめは夏休みを前にポジションを閉じる連中が出始めることだ。

このことは、最高値もその後の急落も、投機筋が作ったことを強く暗示している。こうした急落を、自律反落という。外部要因がなくても買い過ぎや売り過ぎから持ち切れずに反転することを自律反転という。


円キャリーはドル円のロングポジションに繋がる。IMMのデータでは、投機的なドル円のネットロングは直近のボトム6月4日の13万2101枚から、11日の13万8579枚、18日の14万7753枚、25日の17万3900枚、7月2日のピーク18万4223枚へと急増するが、9日には18万2033枚に微減、16日は15万1072枚に、23日は10万7108枚に、30日は7万3460枚に、8月6日は1万1354枚にと急減する。そして、8月13日には一転して2万3104枚のネットショートとなった。

これはCFTCのデータで、13日終了週のレバレッジドファンドの円のネットロングが86枚(約700万ドル相当)と、ネットショートが約2万枚だった6日終了週から一変したことでも確認できる。

そして、海外勢による現物・先物を合わせた日本株投資が、年初来の約2.5兆円の累積買い越しから、7月末には1兆円近い売り越しに転じた。とはいえ、現物はまだ3兆円以上の買い越しだったので、先物が4兆円近く売り越していたことになる。

このことは、円キャリーの巻き戻しが、そのまま半導体関連株の売却に繋がり、米株や日本株指数を押し下げたことを示している。

日銀の会合前にドル円ロングが既に4割以下に減少し、それにつれて株価が大きく売られたことが示しているのは、「日銀が暴落の引き金を引いた」という指摘は、データに基づいたものではないということだ。仮に、日銀の金融政策が現状維持だったとしても、その後の暴落が起きた可能性すらあるのだ。何故なら、それまでの下げで、テクニカルが示唆する短中期のトレンドが下向きに転じていたからだ。


これまで私は、投機筋の勢いだけで日経平均5万円の可能性はゼロではないとしながらも、「4万円台の滞在期間は短い」と言い続けてきた。しかし、今回の急騰、急落で、今後は4万円にも届かない可能性が出てきたと見ている。政策株を売らねばならない金融機関が、2回も4万円台をミスってしまったからだ。

また、投機的には上攻めより下攻めの方が効率的で、短期間で大きな効果が期待できることが分かったので、先物ショートの買戻しが終わったなら、その後は3万円割れ、更にその下も狙うという動きが出てくる可能性すらあると見ている。仮にそこまで下げても、もう日銀の買い支えは期待できない。

一方で、ドル円が下げる要因がほぼなくなった。詳しい説明はまたの機会に譲るが、投機筋がドル円ショートに転じながら、ドル円が下がらないのは、円売り実需が強いことを示唆しているからだ。

 

 


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