「幸福」ってなんなのでしょうか?
あなたは幸福ですか。と聞かれてどう答えますか。
幸福の定義ってすごく曖昧ですよね。
幸福に対する個人差が非常に大きいのです。
また、言語によっても意味が変わってきます。
英語の「happy」と日本語の「幸せ」は同じではありません。
「happy」は「幸せ」よりも「嬉しい・楽しい」という意味が強いのです。
また、「幸せ」は持続的な心の状態ですが、「嬉しい・楽しい」はその場の気分や感情をあらわすものです。
国別に幸福度調査をすると、日本より西洋諸国のほうが「自分は幸福だ」と感じる人の割合が高い傾向があります。
10段階で幸福度を聞くと、西洋のピークは8だけですが、日本のピークは5と8の2箇所に山ができるそうです。
幸福度調査で有名な方法は「ディーナーの人生満足尺度」です。
考案したエド・ディーナーは2008年まで34年間、米国イリノイ大学の教授を務めていました。彼は「幸福学の父」と呼ばれています。
「ディーナーの人生満足尺度」のポイントは、「あなたは幸せですか」といった単純な質問ではなく、5つの質問に7段階で回答してもらうことで、
「幸福」という言葉の曖昧さや、直近の気分の影響を受けにくくしているところです。
この調査では自分が今どれくらい幸福と感じているかという「主観的幸福度」がわかります。
たとえば各種調査によれば、中国の大学生より日本の大学生が、日本の大学生よりアメリカの大学生のほうが「主観的幸福度」は高いようです。
人生満足度を測るテストをやってみましょうか。
次の問に番号で答えてください。
1.全く当てはまらない
2.ほとんど当てはまらない
3.あまりあてはまらない
4.どちらともいえない
5.少しあてはまる
6.だいたいあてはまる
7.非常によくあてはまる
番号がそのまま点数になります。
ではやってみましょう。
問1 ほとんどの面で私の人生は私の理想に近い □
問2 私の人生は、とても素晴らしい状態だ □
問3 私は自分の人生に満足している □
問4 私はこれまで、自分の人生に求める
大切なものを得てきた □
問5 もう一度人生をやり直せるとしても、
ほとんど何も変えないだろう □
5つの問に対する答えの数字を合計してください。
日本人の「幸福度」は次のようになっています。
平均点は18.9点です。
ある一定の年収を超えると幸せ度はあがらなくなります。
その壁が日本では年収750万円にあるそうです。
その理由は幸福を測る物差しが2つあるからです。
そもそも人が「主観的幸福」を感じる要因とは何でしょうか?
真っ先に思いつくのはお金、すなわち収入です。
たしかに収入が高ければ高いほど、住居や食事、衣服や嗜好品にたくさんのお金をかけて贅沢ができます。
ところが、プリンストン大学名誉教授でノーベル経済学賞受賞者のダニエル・カーネマンは、10年に驚くべき研究結果を発表しました。
それは、「感情的幸福は、年収7万5000ドルまでは収入に比例して増大するのに対し、7万5000ドルを超えると比例しなくなる」というものです。
米世論調査会社のギャロップが08年から09年にかけて調査したデータを分析し、得られた結論です。
1ドル100円で換算すると、7万5000ドルは日本円で750万円。
ただ、アメリカ人は日本を含むアジア諸国の人よりも金銭欲が高い傾向にあるのかもしれません。
よって、日本では年収500万~600万円程度でしょうか。これは日本人男性の平均所得511万円(2014年)とほぼ同じ水準です。
なぜ「収入が高いほど幸せ」とはならないのか。その理由は、お金によって満たされるのは、あくまでも「生活満足度」だけで、「幸福度」ではないからです。
「生活満足度」は、「幸福」をつくる要素のひとつにすぎません。
「生活満足」は持続時間の短い感情的満足です。
家や車、外食などの消費で得ることができますが、次第に飽きてしまうものです。
一方、「幸福」とは、「生活満足」だけでなく、長期かつ安定的に心を満たしてくれるものです。
友人とのつながり、築き上げた家族、今まで歩んできた人生の歴史に抱く充実感。これらは「お金では買えないもの」だと言えます。
「生活満足度」は他人と比べられるもの、「幸福度」は他人と比べられないもの、という言い方もできるでしょう。
人間の金銭欲、他人との比較欲は際限がありませんから、どんなに豪華な家やクルマを所有していても、
それを超える豪華なものが目に入れば、満足度は下がります。
しかし、人とのつながりや人生の充実は、他人との比較で簡単に価値が揺らぐものではありません。
平均以下の低収入では、衣食住に問題を抱え、幸福度は低くなってしまうでしょう。
しかしある程度の収入――ひとつの目安として7万5000ドル――に達すると、基本的な生活には支障がなくなります。
つまり、それ以上の収入は「生活満足度」を引き上げることはあっても、「幸福度」にはあまり寄与しないというわけです。
年収が高ければ「快適」であり「便利」にはなりますが、それは必ずしも「幸せ」とは関係ないようなのです。
経済学者のロバート・フランクは周囲との比較で満足を得るものを「地位財」、
他人との相対比較とは関係なく幸せが得られるものを「非地位財」と整理しました。
「地位財」の具体例は、所得や貯蓄、役職などの社会的地位、家やクルマなどの物的財。
一方の「非地位財」は、健康、自由、愛情などです。
この2つの違いについて、心理学者のダニエル・ネトルは著書『目からウロコの幸福学』で、「幸福の持続性が異なる」と論じています。
例えば「結婚」と言うものは、「他人に自慢できる配偶者」「家庭を持っているという社会的ステータス」という意味では地位財であり、
「パートナーとの絆」「家族への無償の愛、つながり」という意味では非地位財になります。
重要なのは、地位財による幸福は長続きしないのに対し、非地位財による幸福は長続きする、という点です。
「少しでも年収を上げたい」は地位財の獲得を目指す志向ですが、それでは幸福が持続しません。
それなのに、なぜ人はついつい地位財の獲得に走ってしまう、目の前にぶらさがった具体的な餌に飛びついてしまうのでしょうか。
フランクは、人間は自然淘汰に勝ち残って進化してきた生物だから、と説明しました。
子孫を残すために重要なのは「競争に打ち勝つこと」。
だから人間は、競争に勝つと嬉しくなるようにできている。
そのため、他人との比較優位に立てる「地位財の獲得」を目指してしまう。
しかし現代社会では、生存競争にそこまで躍起になる必要はありません。
平均年収を超える程度までは「地位財」を目指し、それ以降は幸福の持続性が高い「非地位財」を追求するのが、幸福をつかむ近道かもしれません。
でも私達トレーダーは相場において「地位財」を求めています。
これは相場をやっている全員がそうでしょう。
「地位財」を求めるものいいですが、一緒に「非地位財」も求めていきたいですね。
そのためにも、トレードだけに夢中になるのではなく、家族や友人との時間も大切にしたいですね。