【トレード】マーケットと向き合うということ | しがないディーラー

先週、一週間だけ日本に出張していました。
金融庁が「Japan Weeks 2024」としていたこともあってか(それとは関係なかったものもありましたが)、いくつものブローカーさんがフォーラムやカンファレンス、ネットワーキングを主催してくださっていたので参加させていただきました。
沢山の方と名刺交換させていただいたり、久しぶりにお会いする方とも沢山お会いできたこと、とてもいい機会をいただきありがたかったです。

今週末にはオフィスの移転もあり、今回の出張では一週間しか滞在できず、かなりスケジュールがタイトだったので会食やミーティングなどを入れる余裕が全くありませんでしたが、また落ち着いたら日本に一定の時間をかけて出張し、様々な方にお会いできればと思います。



自分はこれまで沢山の運用者を見てきました。
自分自身も現役で20数年戦い、その後は監督(ディーリング部長やCIOとして)という立場で沢山の運用者を見守ってきました。
自分自身が現役の30歳過ぎたあたりから、育成の必要性を感じ、運用者の育成にも取り組んできたこともあり、相当沢山の運用者を見守ってきたと思います。

その中で後輩たちのごくわずか(成功できる人自体がわずか)ではありますが、運用者としての成長、そして成功、そして限界や終わり…も見守ってきたと思います。
一度、成功といえる実績を上げた人が、ずっと成功し続けるわけじゃない。
それも現実です。


前から自分が言っていること。
「成功体験が邪魔をする」
うまくいったことで慢心し、相場に対する謙虚さを失い、自分自身の相場観や決めつけでリスクを取る。
思ったようにならない相場を、相場がおかしい、相場が異常だと言い始める。
そう言い始めた時点でアウトです。


【相場の声を聞く】
それまでのやり方が永遠に通用すると思っている方がおかしい。
確かに普遍的なものもある。
でも市場は常に変化し、進化する。
参加者の態様が変われば、市場も変質する。

徹底的に分析し、調べ、考え、相場と向き合って判断する。
判断した後は、常にアップデートし、自分の判断と逆のシグナルを発しているものはないか、アンテナを張り続ける。
経済カレンダーやイベントは全て頭に叩き込み、その後の相場展開を予想し、その流れの中でリスクをコントロールする。

自分が考えた動きと違う動きをしているものはないか?
だとしたら何故違う動きをしているのかを納得いくまで調べ、考える。

常に正しいのは相場。
何かを見落としているから、自分の相場観と実際の相場の動きがずれている。
相場がおかしいのではなく、なぜおかしいと感じる動きになっているのかを納得いくまで要因や背景を調べ理解できるまで思考する。合わせるのは自分の方です。

知識や経験は武器にもなるけれど、足かせにもなる。
過去の自分のやり方や成功にしがみつき、おかしいのをマーケットだといい始めた時点で運用者としては終わりが見えてくる。

相場に対して常に目を向け、耳を傾け、相場が発してくれるシグナルを受け止め、納得いくまで思考する。
自分の判断や相場観に対しては、常に疑問を持ち、間違えていないか、何か見落としはないか問い続ける。
過去の自分のやり方や成功体験は所詮は過去のもの。そのとき通用したからといって、これからも通用し続ける保証はない。
だからこそ相場の変化や相場の発するシグナルに目を向け、耳を傾け、自らをアップデートしていく。
それが出来なくなったなら、終わりの始まりだと思った方がいいでしょう。



【自分の都合でリスクを取らない】
初心者にもありがちですが、実績のある人でも追い込まれたり、プライドが高くなってしまうと陥ることがあります。
「大きく稼ぎたい」、「損を取り返したい」
完全に自分の都合でリスクを取り続ける。

今、市場環境を見極めれば、簡単な局面じゃないのは当たり前のこと。
米大統領選、国内解散総選挙と政治的な日程も重なり、先が見通せない。
中東やウクライナ、台湾をめぐる問題と地政学的リスクも過去にないレベルで高い。
金利政策も大きく転換点を迎えており、過剰流動性を背景とした動きは続いているものの、金利がなかった世界から、金利がある世界に市場は変わり、様々なものが大きな転換期に入っている。

ただでさえ難易度の高い局面で、自分の都合でリスクを振り回せばうまくいくわけがない。
客観的に市場を取り巻く環境を分析し、俯瞰する。
その中で積極的にリスクを取りにいくべき局面と、そうではない局面がある。

自分の都合で相場は動かない。
あくまでも相場に自分が合わせる。

そんな当たり前のことができなくなることがあります。
これは若手にはよくあることですし、ベテランでも追い込まれたりするとやってしまうこともあります。

常に同じレベルの確度や自信でポジション取れている訳じゃないはず。
いくつかの銘柄を保有したとして、自信を強く持てている銘柄と、それほど自信がない銘柄もあるでしょう。
同じように自信をもって相場を見通せているときと、そうではないときがあるはず。

強弱をつける。

そんなことすら出来ずに、難易度の高い局面で無理にフルスイングばかりしてしまう。
まぁ若手で金額が小さい間ぐらいは成長への欲から常にフルスイングしててもいいかなとも思います。
それぐらいじゃないとなかなか成長しないですから。

ただある程度のところからは、手が合っていないとき、経験したことがない事象と向き合っているとき、自信の度合いに応じて強弱をつけるということも必要になってきます。

簡単なマーケットと、そうではないマーケットがある。

打ちやすいピッチャーと対峙するとき、狙いにいくのはいいでしょう。
でもすごいピッチャーと対峙するとき、フルスイングでホームラン狙いばっかりしてても三振の山を築くだけ。
相手によっては、ヒット狙い、なんならバントでも、フォアボールでも、デッドボールでもいいから出塁を目指すべき局面も必要になる。


相場に対して慢心や傲慢であってはならない。
常に相場に対して謙虚に。畏怖の気持ちを忘れず、耳を傾ける。
自分の考えとは違う動きをしていることを頭ごなしに否定せず、なぜそうなっているのかと向き合い、納得できれば、それに合わせるということも必要。
もしその動きを理解ができないのであれば、相場が見えていないということ。それならやらない方がマシです。ポジション取らなきゃ損はしないんですから。
その動きの背景を理解できるまで調べて思考し、納得できて初めてリスクを取ってリターンを獲得しにいく。


運用者は生意気でもやんちゃでもいいけれど、相場に対してだけは謙虚であること。
これが長く生き残っていくために忘れてはならないことだと思っています。


しがないおじさんが、これから運用者を目指す若い人たち、今運用者として戦っている後輩たちに頭の片隅にでも入れておいて欲しいと思うことです。

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