【トレード】市場でまぁまぁ発生する異常な動きが起きたとき | しがないディーラー

8月5日の日本株のクラッシュ。

後からみれば、あれがどれだけ異常値だったか分かるのは当たり前ですが、それを事前に察知できるかどうか、そしてその最中にどこまで適切に対処できるかどうか?というのは、非常に難しいものです。

自分自身も3万5千円程度までの下落は想定の範囲ではありましたが、そこからのクラッシュ振りはハッキリ言って想定外でした。

誰も想像していなかったような状況にあるからこそ、あのクラッシュに繋がったのでしょうし、市場においてはそういうことは何十年に一回どころか、まぁまぁ起きるものだったりもします。

強いて言うならば、8月5日の引けにかけて目を瞑って買うぐらいが一番リスクの少ない勝負だったと思いますが、それまでノーポジや、ポジションに相当余裕を持てていた人じゃなければ、そこを取りにいくのは難しかったでしょう。

ポジションがあった人がどう対処できたか?
どう対処すべきだったか?

これは非常に難しいところです。
特にあそこまで急速に乱高下されてしまうと、瞬間の一つの判断誤っただけで、大きな損になったり、取りそびれたり、取ったり取られたりにもなりかねない。

日計りとか、短期でやっている人は、相当機動的に判断を切り替えられますし、ボラティリティがある相場では強いですから、チャンスと言える相場だったかもしれません。
ただポジション抱えて運用していると、あそこまでの急激な変化にどこまで機動的に対処できたか…?
逆に全く対処できずに呆然としていて、ロスカットすらしなかった人がかえって救われたような動きでもありました。

ではロスカットせずに何もしないのが正解か?
と言われると、もし今回のクラッシュが需給的な要因による一時的なものでとどまらなかった場合は、非常に危険な状況に陥りかねないとも思います。
今回はそれで救われたかもしれませんが、そうではないときもあります。
その見極めができたうえでの我慢ならいいですが、何が何だか分からないうちにそうなったという人は、少し気を付けておいた方がいいでしょう。


市場は時として、頭で考えると「おかしいだろ!」って感じてしまう異常な動きをするものです。
投資家向けレポートにはある程度まとめてみましたが、検証してみれば、いくつか市場はシグナルを発してはいたかもしれません。
市場参加者の投資行動や、それに伴う個々の銘柄の反応など…。

しかし、それが出来ていて、警戒を強めることはできたとしても、あそこまでの下落は想像できなかった人がほとんどじゃないでしょうか?
市場からちょっと距離を取っていた人の方が冷静かつ客観的に見てチャンスと捉えられたり、そのクラッシュの最中の時間帯が日曜日の夜だった欧米投資家の方が慌てずに済んだかもしれません。

市場が暴走や異常な動きをしてしまうときって、賢明なはずの運用者がより大きなダメージを受けたりしがちです。
自信があるからこそ、そのミスプライスを果敢に取りにいってしまったり、抱えているポジションをそんなミスプライスで外したくないと我慢してしまう。

本来、合理的な判断のはずなんですが、市場でその価格がついてしまうと、ロスカットが必要な運用をしている人はどうしても反対売買を迫られることになる。他人のお金を預かってする運用や、他人のお金を借りて運用している人(信用取引やレバレッジ)の中には、少なからず強制決済に追い込まれた人もいたでしょう。
ロスカットのいらない、自己資金のみでの運用なら我慢も効くのでしょうが。。。

「市場は常に合理的に動くわけではない」

ということは頭の片隅に入れておくべきでしょう。

LTCMの破綻…とても賢明なはずのノーベル賞受賞者が運用に携わっていても、市場の異常値に直面したとき、過度なレバレッジが致命傷となった。

クオンツ・ショック(パリバ・ショック)…2007年に生じた賢明なはずのクオンツが虐殺されたとまで言われた異常な動き。

頭のいいはずの人たちでも、市場の異常値に巻き込まれたとき、大きな損失を出してきた歴史があります。
彼らの思考や論理が間違っていたというよりも、市場が合理性を失った動きをしたときに、賢明なはずの人たちが破綻に追い込まれてきたということでしょう。

市場が想定外の動きをしているとき、何かを見落としている、何かが見えていないから「想定外」の動きになっている。
だとしたら、それが見えて、自分のなかで腑に落ちる理由が整理できるまでは、リスクを落とす必要があります。

そのときに「自分たちは間違っていない」と、過大なリスクを抱えて踏ん張ったとき、賢明なはずの人たちほど最後にロスカットに追い込まれてしまう。

どんなに勝てていても、儲かっていても、常に市場に対する畏怖、怖さは知っておかなければ、いつかそういった落とし穴にはまるかもしれません。
そこで生死を分けるのが「リスク・マネジメント」なんです。


よく分からない動きが市場で起きているとき、どこでリスクを落とすべきなのか?
自分の中で整理しきれない動きが生じたときに身を守る判断ができるものは持っておいた方がいいでしょう。

個人的にはそういったときにはテクニカル分析などを用いていました。
何を使うか、はそれぞれでもいいと思います。
自分は過去10年ぐらいのデータを使って、バックテストを積み重ねたうえで信頼できると考えていたものをいくつか優先順位をつけて判断基準にしていました。

テクニカル通りにやれば簡単に儲かるなんてつもりは全くありません。
ただシンプルかつ客観的なものほど、そういったときの判断には有効だったりします。

ロスカットすべきポイント、相場見通しを切り替えるべきポイント。
少なくとも客観的な数値や水準でそれを推し量ることができ、自分なりに踏ん切りをつけるべきポイントを設けておくことが、自分の予想もしていなかった動きに巻き込まれないために必要なときがあります。

人間誰でも間違えるし、こんな動きを最初から予想出来ている人はほぼいなかったでしょう。
そのときに客観的にこの水準を割り込んだ時点でこうする、ということが予め整理できていると、パニックに巻き込まれずに対処できたりします。

自分が若手のオプションディーラーだった時代、ショート・ガンマのポジションを持ちながら、阪神淡路大震災やベアリングス・ショックを受けた日でもプラスで終われたのは、テクニカル分析を元にヘッジプランを毎朝自分でしっかり作っていたことによります。
もちろん巨大地震なんて想像もしていませんでしたし、ニック・リーソンという一人のトレーダーが英国名門銀行であるベアリングスを破綻に追い込むほどの日経平均先物を買いこんでいたなんて知りはしませんから…。


それが起きたときに冷静な判断ってなかなか出来ないものです。
「こんなところでロスカットしてたまるか!」
という気持ち、不安や焦り、苛立ち、様々な感情に揺さぶられる中で適切な判断というのはなかなか出来ないものです。


でもそこでの対処が、自分の身を異常値から守り、場合によっては次の一手を打つ余裕を作ることになる。


もう一点、今回のクラッシュはチャートも「ぶっ壊れた」というほどのクラッシュ振りでしたから、うまくこの動きをリターンに繋げられなかったからといって、あまり引きずらないことが大事です。

相場はなくならないし、逃げません。
今回のような異常ともいえる動きで「勝った負けた」を引きずり、その後のトレードに影響を与えてしまうことの方が問題です。

損失で終わってしまった以上は、何を見落としていたのか、何をどう判断するべきだったのか、どこでどう行動するべきだったのか、しっかり自分なりに振り返って見直す必要はあるでしょう。
でも悔しさや焦りから、取り返したいと無理にリスクを取りつづければ、下手をすれば損を拡大させかねません。

いったん頭を切り替えて、市場といったん距離を取ったうえで、状況を俯瞰し、整理しなおしてから勝負すればいい。

終わったことは引きずらない。
切り替えてこれからを考える。
ただし、なぜそうなったのか、一度市場を俯瞰し、状況を分析し直すプロセスはしっかりと。


下は2022年9月を100とした日米欧主要指数のチャートです。
今回の日本株クラッシュが突出して異常であったことは確かでしょう。
先日のブログでも書いたように、この背景にはいくつかの要因が重なっていると自分は考えていますが、その余波がまだ残っているからこその妙な底堅さも感じたりもします。

それでもほぼこのクラッシュの動きは一巡し、市場は回復しつつあります。
ただこれだけの動きが生じた以上、需給面では大きな変化が起きています。
結果として、クラッシュ前の相場とクラッシュ後の相場で物色動向や流れが変わる可能性は十分にあります。

そして何よりも重要なのは、このクラッシュが起きた背景や状況を理解し、現在の相場状況を俯瞰して理解すること。
戦況を理解しないで、戦術だけにこだわっていると、思わぬリスクに直面することになるかもしれません。

自分は少なくとも今後1~2年程度、潜在的なリスクをしっかりとモニターしておく必要があると感じています。
2000年代のマーケットで何が起きていたのか、今一度振り返っておく必要はあるかもしれません。

日米欧




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