【マーケット】留意しておきたいこと | しがないディーラー


円キャリー云々で最近よく取り上げられるCFTC(米商品先物取引委員会)が毎週公表しているレポートによる「商取引ではない≒投機的」と言われるポジション残高の推移です。

20240813_CFTC円

2007年6月頃にショート(ネット含む)がピークをつけ、その後急減しています。
2012年末頃からショートが再拡大し、足元では2007年に匹敵するレベルまで円ショートは拡大していました。

それがこの数週間で一気に巻き戻しされる形で、円ショートポジションは確かにほぼ解消されつつあります。
これが円キャリー取引の残高とイコールではありませんが、円キャリーによるポジション残高の統計がないので(もしあれば教えてください)、円キャリーによって拡大していたポジションの一つが急激な解消に向かったということは言えると思います。


次のグラフは日銀が公表している「外国銀行在日支店の主要資産・負債」です。
これも円キャリーの推移と近似的な動きをするという人もいらっしゃるので見てみました。
外銀

2007年初めにピークをつけた後、急減しています。
そして最近では日米長期金利差が拡大するにつれて拡大し、15年振りの水準にまで拡大していました。


下のグラフは前回のブログでも取り上げた信用残高の推移です。
信用買い残高は2006年前半にピークをつけた後、急減。
足元ではその時期に匹敵する水準まで信用買い残高は拡大していたことが確認できます。

信用残高推移

それぞれこうして長期の時間軸でのデータ推移をみると、ほぼ同じ時期にピークをつけて、その後急減していました。
共通していたのは、それぞれがピークをつけたのが「リーマン・ショック前」ということです。たまたま…かもしれませんが、個人的にはそうではないと考えています。

リーマン・ショックが起きたのは2008年9月です。
それを遡る一年以上前の2006~2007年に、これらの指標はピークをつけて急減する動きを示していました。
FFレートの推移を見てみると、2000年のITバブル崩壊以降、利下げを続けて1%まで下げた後、2004年年央から利上げサイクルに入り、2006年年央で5.25%をつけた局面です。利上げの打ち止め→利下げへの転換期に、需給面で拡大しきっていたものが急減する動きが生じています。

そしてその時期も「円キャリー」が話題になり、問題にもなっていました。

FOMC.png


今回もそのときと共通点があるような気がします。
状況といい、タイミングといい…。
同じことを繰り返すとも思いませんが、留意しておきたいのは、その一年以上後に起きたのが「リーマン・ショック」であったことです。

経済的に安定した巨大国家、流動性が潤沢な通貨間での金利政策の乖離がキャリートレードを拡大させ、潜在的なリスクを拡大させる。それが金利政策の転換をトリガーにしてはじける。

あのときの「サブプライム」に代わりえるマグマがなければ、あまり気にする必要はないのかもしれませんが、今回の市場の揺れが短期間に留まるのか、その揺れが時間をかけて徐々に様々なところに波及し、もっと大きなところに波及するリスクがあるのか?しっかりと見極める目を持つ必要がありそうです。

短期的な上げ下げにあまり一喜一憂せずに、一度市場全体を俯瞰して、客観的に状況を整理しておくべきでしょう。


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