1月23日のアルゼンチン・ペソの崩落を機に、一挙にマーケットの話題となったフラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨)。
このうちトルコ・リラについてはその以前から政権汚職問題で大幅な下落を示していました。
また南アフリカ・ランドも、同国の白金鉱山ストライキ問題で下落。
1月20日の「マーケット・スクランブル」放送では、その前回で取り上げた白金が大幅上昇していましたので、YEN蔵さんや大橋ひろこさんからお褒めをいただきました。
しかし番組中でも触れたとおり、その上昇は白金鉱山ストライキ懸念も加わってのものです。
鉱山スト懸念は白金価格を確かに上昇させましたが、南アの信用も傷つけてしまい、大幅な通貨安をも招いてしまいました。
ランドを含むフラジャイル・ファイブの下落は、世界経済の失速懸念を招き、いわゆる「リスクオフ」で、白金価格は結局のところ放送直後から株価もろとも大幅下落。
「因果は回る」というのは言いすぎでしょうか?
現在、ニューヨークの先物市場での白金価格は約1385ドル近辺です。
鉱山での採算ラインは一説では1400ドルとされており、現在の価格は言わば原価割れ状態です。
さて、現地ではストライキ中のアングロ・アメリカン・プラチナム(アムプラッツ)社、同社は世界最大の白金鉱山会社ですが、その2013年の企業収支は黒字に転換したと発表されました。
ニューヨーク白金先物の、2013年12月31日時点での200日移動平均線の位置は約1444ドルです。
2013年の一年は、平均すれば鉱山採算ラインを上回っていたと言えますので、アムプラッツが黒字になったというのは整合性があります。
ただし現在進行形のストライキや白金価格下落が、同社の収支を圧迫するであろうというのは想像に難くありません。
同社CEOのコメントでは南アでの白金事業の見直しを示唆しています。
鉱山ストライキは皮肉にも白金価格を下落させてしまいました。
それを理由に、鉱山会社はさらなるリストラ策を打ち出すかもしれません。
そして、そのしわ寄せは現地労働者へ向かいます。
ただし、ランド安は、日本の円安と同様に輸出には有利です。
そして世界標準の白金価格は米ドル建てであり、かつ貴金属は世界共通の価値を持ちます。
このあたりは実物資産「モノ」の通貨ランド「カネ」に対する有利な点であり、よって鉱山会社の現地での生産コスト(ランド建て人件費)は圧縮されているように思えるのですが。
アムプラッツCEOの言は、ストライキ中の労働者への恫喝にすぎないかもしれません。