「取る」ではなく「取られない」 | 株式投資「虎の穴」

中源線の売買に裁量を入れるとき、「手を加える以上、利益率が上がらないといけない」と考えるのは当たり前です。

よさそうな転換を見つけて数量を増やす、利が乗ったあと最高のタイミングで手仕舞いを行う(転換を待たずに天井近くで売る、最安値近くで買い戻す)といった発想です。トレンドの途中で細かい操作を加える、なんてアイデアもあるでしょう。

でも、まずは逆のこと、「損になる売買を減らす」ことを考えてみてほしいのです。

ワクワク感が薄いのですが、すべての項目において、「増やす」よりも「減らす」が正解になることが多い、と考えるのです。

「すべて出動する。絶好と思えるときは数量を増やす」ではなく、「ダマシが出やすいときは積極的に休む(転換を見送ってゼロのまま見ている)」と、消極的な方向に傾ける姿勢です。

「ビミョーだなぁ」と感じて見送ったら大当たりの転換だった……しまった、チクショー、とサイアクの気分を味わうので「どうしても避けたい」と考えるのが人情ですが、なにを持ち出そうが予測の的中率を大幅に引き上げるのは難しいので、取り損ないの悔しい結果を覚悟して「見送る場面をつくる」のが裁量の第一歩です。

心理的に実行しやすい方法では平均的な投資家と同じになる、正解は実行しにくいところにある、こう考えてみることに価値があるはずです。

中源線のルールには、“こだわり”がバランスよく並んでいます。
それを納得して中源線を使っているのに、別のこだわりを追加するのが裁量ですから、試行錯誤の進め方は重要で、深い注意が必要だと考えます。

「ここぞ」という場面で数量を増やす“攻めの裁量”は、誰もがやりたいと考えてワクワクすることです。

でも、意外とすぐに散らかった状態になり、混乱に陥るでしょう。
まずは引くことです。「取る」を増やす前に、「取られる」を減らそうという考え方です。

もちろん、「これはダマシっぽい」と思って見送る行動が当たる(懸念通りにダマシになる)とは限りません。「なんだ、やればよかった」という結果だって、けっこうあります。

でも、いきなり足し算はハードルが高いので、まずは引き算でスカスカな感じにして、「さて、ここに何を足すべきか」と落ち着いて考えるのが王道でしょう。

家の中のものを捨てられない人を対象に、断捨離のプロが指導するテレビ番組を見たことはありませんか?

最初にやるのは、「これ、捨てないでしょ」と思うようなもの、例えばテレビや冷蔵庫まで一切合切、家の中のものを完全に表に出すところからスタートします。家の中を空っぽにして、すべての家具や調度品、大型家電まで外に並べてしまうのです。

不思議なことに、「これを捨てることはないだろう」と周囲が予想していたものを「捨てる!」と言い出すほどに変化するのです。思い切った試みで心の中が整理され、家の中が非常にスッキリするのです。

「引く」ことで、新しい発想、新しい価値観が生まれるのだと思います。

―4月2日のブログにつづく―
 

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