「金融リテラシー」と聞いて、「金融商品の知識」と答える人が多いかもしれませんが、私は全く別のことを思い浮かべます。
株式、債券の仕組みを知っているとか、投資信託の種類に詳しいとか、そんな状態は頼もしいと思います。
でも、そういった知識の土台にあるのは、「おカネに対する認識」です。
私たちは、日常でおカネを使います。
きちんと計算するだけでなく、「これは高い」とか「安いから買いたい」とか、価値判断も行います。
ただ、ふとしたときに“浮ついた感覚”で考えてしまうのです。
「予期せぬおカネが入ってきた」ときなどは、まさにそうです。
急に気が大きくなって、おカネの使い方が荒くなるとか、「運用しないといけない」なんて強迫観念で行動して失敗するとか……
もともと手元にある資金について考えるときだって、十分に経験があるオトナがフワフワした気持ちになってしまうことがあります。
手元にある200万円は1年半後、車の買い換え時に出ていく──状況を再確認した瞬間に、「あっ、その1年半の間、うまく運用できないだろうか」なんて……。
思いつきで行動したときに起こるのは、大きな方向ちがいだけではありません。
「偏った計算をしすぎる」なんてミスもあり得ます。
「1年半後に使う」ということは、その直前には、必ず換金する(現金に戻す)ことが第一です。この部分をおろそかにしてギリギリの計算をしたり、期待先行のプランを立てたら、困ったことが起こるかもしれません。
金融市場は、時として状況がガラッと変わります。
狙いは大筋で大丈夫だったとしても、おカネが必要な1年半後、一時的に都合のわるい状況になっていて「いま換金すると損になる」なんて結末があるとか。
サイアクは、換金が難しい、どうしよう……というオチです。
私たちは、「努力で状況を変えていく」ことを教育されています。
ところが、金融市場の出来事は、自分でコントロールできないのです。
だから、かなり余裕をもってプランをつくる必要があります。
そもそも、「リターン」にばかり目が向いてしまうのがフツーです。
表裏一体の「リスク」を考え、「サイアクこんなこともある」という状況をガッツリと想像しなければならないのです。
さらには、「リターン」と「リスク」の計算だけでなく、肝心要の「換金性」を最初に考えるべきなのです。