自動車は、楽しく、快適に、目的地に向かってスムーズに進むための乗り物です。
でも運転する人間は、車中で会話を楽しみながらも、車の状態や周囲の状況に注意を払っています。
1秒未満の短い時間、不注意をしただけで、大きな事故が起こり得るからです。
相場・トレードでは、利益を得ることが狙いです。
でも、自動車の事故防止と同様に、危険の要因に目を向けることも必要です。
買った銘柄が上がる結果をポジティブにイメージする一方で、「誰かオレが買うのを見ていたの?」と言いたくなるほど見事に下がってしまうことも考えるのが現実です。
4月28日のブログで、「自滅する恐怖」に触れました。
出遅れ狙いでも、トレンドのスタートを狙う順張り戦略でも、自分の思惑とは逆に動いていく悲しい結果も十分にある、というか、「50%の確率でそうなるよ」と覚悟し、正しく怖がる気持ちは不可欠です。
中源線は、この恐怖心をストレートにルール化しています。
大きく下がって魅力的な水準に至っても、陽転することはありません。
どんなに小動きになっても、やはり陽転しません。
陽転しないかぎり、ポジションは「売り継続」です。
安いからと買って逆行する(下がる)ことを恐れているのですが、ピクンと上昇する、つまり「下げトレンドに対する逆行」にも敏感に反応し、陽転と判断します。
中源線の特徴です。
複雑なものを複雑に語るのはラクだといわれます。
実践的、実用的なものは、「複雑なものを単純化」しています。
でも、私たちの思考そのものが実に複雑です。
下がって小動き横ばい……「これ以上は下げない」と読んで仕込む出遅れ狙いをする一方で、「上げの兆候がないかぎり買わない。ポジションを持つとしたら売り」とルール化された中源線の観点に納得しています。
出遅れ狙いでも、値ごろにこだわらず柔軟に対応することがあります。
安値圏で這いつくばっている銘柄が、買わないうちに上がりはじめたとします。
直前の安値保合まで下がって買い場を提供してほしいと希望する気持ちもありますが、「そこまで下がったら完全な出損ない……逆に買いたくない」という発想もあります。
実に複雑なことですが、それを整理して答えを出す器用さも持ち合わせています。
ただし、いろいろな対応があるということは、その場だけの思いつきで、それこそ自滅に向かう可能性も秘めています。
こんな悩みをどうするか──ややこしい状況をシンプルに整理する緻密な作業が、相場・トレードの本質ではないでしょうか。
中源線のルールも、こうした実践的な考えによって導き出した、ひとつの確固たる答えです。