・ドル円はどこまで下がる? | 矢口新

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☆ドル円はどこまで下がる?

大手銀行などがドル円はここからも下がると予測している。

2025年のドル円相場は急速にドル安円高となり、4月22日には一時139円台と、24年9月以来のドル安円高水準となった。1月10日には159円の手前までドル高円安となっていたので、20円近い値幅となる。

2011年に貿易収支が大幅赤字となりドル円が上昇トレンドに転じてから、ドル円がこれ以上の値幅で大幅下落したのは、22年10月半ばから23年1月半ばまでの約25円幅、24年7月初めから9月半ばまでの約22円幅の2回なので、それらに次ぐものとなる。

どちらの場合も日本の貿易収支は赤字で、日本からの円売り外貨買い需要が出ている。また、金利差もドルが高く円が低いので外債投資の円売り外貨買い需要もあるはずだ。日本株の方は、22年の外国人は年間で2542億円の売り越し、24年は買い越しだが1543億円なので、22年には20兆円を超え、24年でも5兆円以上あった貿易赤字から来る円売り外貨買い需要と比較すれば無視していいような数値だ。

また、24年からは新NISAがスタートしたので、個人からの円売り外貨買い需要が大きく出ている。この需要は25年に入っても続いていて、日経新聞によれば、投信流入額のトップ8はすべて外株投資だ。1位は米株投信で年初から4月11日までの累計で8806億円、2位はオルカンで8682億円。3位から8位は2811億円~1101億円で、1位から8位合わせて3兆円を超える。つまり、ここでも円売り外貨買い需要が出ているのだ。

つまりこの期間、実需を反映したトレンドは円安ドル高なのだが、時々ドル円は大きく下落しているのだ。どうしてなのか?

22年のケースは9兆円を超える円買いドル売り介入に加え、日本の投資家から過去最大の外債売りが出た。理由は米連銀利上げに伴う米国債の大幅な値下がりなのだが、幸い円安ドル高で為替差益が出ていたために、円建てでは損失を相殺、あるいは利益を出して売ることができた。また、当時はまだ利上げ途中だったので、債券の損失を食い止める必要があったのだ。

24年のケースは、円買いドル売り介入が16兆円に膨らんだことに加え、過去最大の円キャリーの巻き戻しが出た。キャリートレードとは、低金利で借りた通貨を高金利通貨に換えて、キャリー(保有)することで、金利差を得る取引だ。24年のケースでは、保有しているドルでエヌビディアなどの米株を買うことで、株式からのキャピタルゲインも期待できていた。ところが、株式が値崩れしたので、米株売り、ドル売り、円を買い戻して返却するという巻き戻しが出た。それに乗じて、投機筋がドル買いから円買いに転じたので、大幅なドル円の下落に繋がった。

今回は、大きな外債売りが出た形跡はなく、大きな円キャリーの巻き戻しの形跡もない。また、当局による市場介入の形跡もない。では、どうしてこのような大幅なドル円の下落が起きたのか? 誰がドル売り円買いをしたのか? とはいえ、ここでも過去最大になっているものがあるのだ。「投機筋のドル売り円買い」だ。

シカゴIMMのデータでは、投機筋は2月に入ってドル円ロングからドル円ショートに転じている。以降はほぼ一貫してドル円ショートを積み上げてきた。

私はIMMが現状の形でデータを公表し始めた2012年5月以降のデータをすべて保管しているが、過去においてドル円ショートが8万枚を上回ったことは一度もなかった。今回は2月末に始めて9万枚を超え、翌週には13万枚を超えた。私が持っている直近のデータ4月15日時点では、17万1855枚に膨れ上がっている。過去最大の約2倍のショートだ。

データ期間のドル円金利は常にドルの方が高いので、ドル円ロングではキャリー取引の利益が出るが、ショートでは金利の支払いが生じる。そのため、ドル円ショートの期間は通常短く、量的にも8万枚を上回ったことは一度もなかったのだ。

前述の24年の大幅下落時には7月初めのロング18万4223枚から、9月末にはショート6万6011枚まで売られた。ショートの期間は11週間で、差し引き最大25万枚以上が売られたことになる。

22年は10月末のロング10万2618枚が最大で、下落時にもショートにはならず、23年1月末のロング2万0060枚が最小だった。

コロナ禍の20年は、米連銀の政策金利がほぼゼロだったので、3月初めから翌21年3月初旬まで1年余りドル円ショートが続いたが、最大量でも5万0520枚だった。この時のドル円はコロナ禍初期に最大で11円幅下落した。

ドル円相場は金利差の関係から通常はドル円ロングで、ショートにするには確信的にドル安円高を信じることが必要だ。

今回のドル円ショートの理由とすれば、1、日銀利上げか米連銀利下げ、あるいはその両方による日米金利差縮小。2、トランプ関税による米国の景気後退とインフレ同時進行のスタグフレーション懸念。3、米国が中国との貿易戦争に負ける懸念などだ。ショートの大きさから判断すると、投機筋はその3つとも実現の可能性があり、それがドル安に繋がると見ているようだ。実際に、多くの大手の外為銀行らはドル円が下がると予測している。

とはいえ、貿易赤字に伴う円売りドル買い需要は、モノの取引に絡むものなので、売戻し買戻しのないドル買い圧力となる。トランプ関税で日本の貿易赤字が減り、貿易黒字にもなればドル安円高に向かうが、逆に日本が米国のものを買わされると、日本全体の貿易赤字は拡大、円売りドル買い需要が増えることになる。つまり、ドル円には上昇圧力となる。

また、米の政策金利は、関税によるインフレ懸念で、簡単には下がりそうになく、一方で、日本政府は悪影響が出た場合の支援を約束しているので、利上げは難しいのではないか。つまり、金利差が縮小する可能性は低くなった。

加えて、仮にトランプ政権がドル安円高を望んでいるとしても、実需はドル高円安を指しており、実際にドル円を売っているのは、投機筋だけなのだ。22日時点でもドル円ショートは確実なので、ショートは12週間続いている。

ところが、上述のように投機筋はロング、ショートを繰り返すだけで、今売っている過去最大規模のドル円はいつかどこかで必ず買い戻す。私見ではその買戻しの時期は近く、仮にショートをロングに入れ替えるとすれば、貿易実需、資本実需に加え、投機筋からも過去最大のドル買い円売りがでることにもなりかねない。

 

 


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