トレードにおける見通しとポジション操作を、ふだんの生活に置き換えてみます。
「電車に乗って、仕事の打ち合わせに出かける」という状況で考えてみましょう。
「電車は時間通りに来る」「問題なく目的地に着く」というのが理想で、現実的な見通しでも「若干遅れることはある」くらいの想定でしょう。だから、例えば10分とか15分ほど早めに出て「現地で時間をつぶそう」、といった対応で十分だと考えます。
しかし、もっとわるい状況もあり得ます。
電車が動かないとか、駅に向かう途中で水をかけられてビショ濡れになるとか……。
すべてを想定して30分、あるいは1時間も早く出ることはないでしょうが、オトナとして想像できるトラブル、何かしらの対応策があるはずです。
電車にかわる移動手段、相手に連絡する方法、急ぎ電話して時間をずらしてもらうお願いの言葉、等々です。
では、トレードでも同じことをしているか──。
考えてみると、ユルい部分や足りないことが見つかるのではないでしょうか。
生々しく“カネ”を思い浮かべるあまり、絵に描いたように勝つ理想の展開しか頭の中にないとか・・・
「理想の結果」を想像するのは当然ですし、ポジションを取るうえで不可欠な要素です。ただ、わるい状況も想像しておくのが正解です。
相場は逃げない──「いつでもチャンスはある」という意味で、慌ててポジションを取ってしまう行動を戒める言葉です。
理想の展開にとらわれると、機会損失とも呼ばれる「取り損ない」の失敗を嫌がり、ちょっと軽率な行動に走ります。
「いい銘柄を見つけた!」と急いで買って、「なんだ、もっと安いところがあった」なんてことは、まさに“相場あるある”。逆に、「急激に上がって買うタイミングを完全に逃した」なんてケースは、思っているほど多くありません。
日ごろから「相場は逃げない」とつぶやき、出動(仕掛け)を考えながら「これ、もうやるっきゃない状況?」と自問するくらいがいいのです。
そうしたプロセスを入れ、ひと呼吸おいた落ち着いた状態で「よし、買おう」と判断したのなら、(その予想が当たるということではありませんが)「確固たる予測」「明確な作戦」が整っている状態です。
当然、「その後の対応」も用意できているから、株価変動に対して質の高い行動を取ることができます。
気をつけたいのは、「ちょっとビミョーだな」と感じられる状況です。
利益の可能性がある、見送って後悔したくない……こんな気持ちでポジションをつくると、なんだかユルくなります。期待通りの動きでも利食いのタイミングで迷うし、逆行したときはフリーズしてしまう可能性が大です。
「よし、これだ!」と思えるときだけ出動し、ちょっと気になる程度の状況では「わからない(確信がもてない)」「だから手を出さない」と捨て去るのが本当の正解です。
個人投資家、とくに兼業投資家なら、利益の取り損ないを恐れる理由なんてないのです。機会損失を嫌がらずに休むことこそ、個人投資家がもつ「最大の武器」と考えてください。
本番の売買は、リセット可能なテレビゲームとはちがいます。