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☆青ざめた顔と、破顔の笑み

世界的に株価が急落している。予想以上に厳しいトランプ関税と、それに対する報復関税が世界経済を後退させるとの懸念からだ。

米トランプ政権は世界の国々からの輸入に一律10%の関税を導入した。加えて、対米黒字の大きな国々、高関税の国々、非関税障壁がある国々に対しては、その程度に応じた追加関税を適用する。そのことで、世界の国々に対し、最低10%、最高54%の輸入関税が適用されることになる。

米国による高関税が経済に与える影響としては、1930年に導入したスムート・ホーリー法とそれに対する報復関税で国際貿易が停滞したことや、1963年以降ピックアップ・トラックにかけた25%の輸入関税が外国製を締め出したことなどが挙げられている。

スムート・ホーリー法では、農産物や工業製品を中心に約2万品目の輸入品に対し平均50%という高い関税がかけられたと言うことだが、現時点で分かっている今回のトランプ関税は、中国製品にはこれまで発表の20%に34%が上乗せされ54%の、カンボジアには49%の、ベトナムには46%の高率が課せられる。

また、米国でよく見られるピックアップ・トラックはGM製やフォード製などの米国製で、紛争地などでゲリラの酷使にも耐えている日本製はあまり見かけない。今後はピックアップ・トラックには50%、乗用車には27.5%の関税がかけられることになるので、乗用車でも外国製が見られなくなるかも知れない。

ちなみに、米国で売られている自動車で、100%米国製なのはテスラとリビアンだけだ。フォードは78%が米国製で、以下に高い順から、ホンダ64%、ステランティス57%、スバル56%、ニッサン53%、GM52%、BMW48%、トヨタ48%、メルセデス43%、ヒュンダイ・キア33%、フォルクスワーゲン21%、マツダ19%、ボルボ13%などとなっている。つまり、日本車ではマツダへの影響が最も大きい。

2024年の輸入先はメキシコが785億ドル、日本が397億ドル、韓国が366億ドル、カナダが312億ドル、ドイツが248億ドルだった。日本車の多くはメキシコから輸出しているが、自動車にはどこから輸入されてもピックアップ・トラックには50%、乗用車には27.5%の関税がかけられる。

2024年の1台平均の輸入車価格はドイツ車が一番高く5万5535ドル、カナダからが2万9283ドル、日本車が2万8829ドル、メキシコからが2万6506ドル、韓国車が2万3834ドルだった。


関税負担は輸出国や輸出企業が負うわけではない。2024年の1台平均の輸入車価格を基にすると、日本からの輸入乗用車にかけられる平均7928ドル(1ドル150円だと119万円)の関税は米国の消費者たちが支払う。また現在、米のインフレ率で最も高いのは自動車保険で、前年比で2割高ほどのペースで上げ続けているので、高くなった日本車を買う余裕がなくなるかも知れない。

加えて、米国の消費者たちはすべての輸入品に対しての関税を負担する。アップルは中国の製造拠点に大きく依存しており、値上げ幅は40%を超えると予想されている。アイフォーンの値上げ幅はモデルに準じて2万5000円から10万円近くにもなりそうだ。

また、米国が輸入する玩具の約8割、履物の約4割が中国製だったとみられているが、ベッセント財務長官は、中国には計54%の関税が課されると述べた。

衣料品も対米輸出トップは中国で、バングラデシュ、カンボジア、インド、インドネシア、パキスタンなどが続くが、それらの国々の関税率も高い。また、家具の約29%は中国製、約26.5%はベトナム製で、ベトナムには46%の関税が課される。

電子機器(コンピューター、テレビ、キーボード、メモリーカード、ハードドライブなど)と通信機器の約34.5%は中国製で、マレーシア、台湾、ベトナム、日本、ドイツ、韓国も主要輸出国となっている。

コーヒー豆は約80%が中南米産で、シェアはブラジルが35%、コロンビアが27%。両国は10%の関税に直面している。カカオ豆は、主にコートジボワール、エクアドル、ガーナからで、それぞれ21%または10%の関税率だ。また、ココアバターはインドネシアとマレーシアからで、それぞれ32%と24%の関税となる。

EU諸国で生産されたワインには20%の関税が課される。米国のワイン輸入は数量ではイタリアが、金額ではフランスが、2位を大きく引き離してのトップだった。フランスはシャンパンなど高級ワインを持つため。


日本製品の関税率は24%だが、米国で自動車や電子機器などの輸出品が売れなくなると、日本の輸出企業の賃上げも多くは期待できなくなる。また、他国が報復関税を適用し、日本も関税を引き上げると、輸入物価が更に上昇することになる。海外依存の高いエネルギーや食料価格の高騰は避けられない。加えて、輸出が減り、輸入価格が上昇すると、日本の貿易赤字が拡大して大きな円安要因となる。円安になれば、それがまた輸入物価を押し上げる。

こうしたトランプ関税への対策として、日本政府はガソリン代の補助を決めた。一方、トランプ関税に先立つ2月のコメ販売価格は前年比+172%だった。そのため、消費量は1割ほど下がっており、代わってシリアルやフライドポテト・ハッシュドポテト、パスタ、メンチカツやフライドチキンなどの揚げ物、春巻きや麻婆豆腐などの中華料理・炒め物の消費が増え、費用を抑えてもボリューム感を出しやすいメニューが人気となるなど、国民は自衛に努めている。

予想以上に厳しいトランプ関税と、それに対する報復関税は世界経済を後退させるだけでなく、生活スタイルや産業構造の変化も強いることになるのだ。

そうしたトランプ関税を「理不尽」だと嘆いても仕方がない。トランプ大統領が「私の政策は変わらない」と強調しているように、関税引き上げは公約で、米国民はその公約を支持してきた。株価の急落は投資家たちが勝手に自分の見方の方が正しいと誤解していたからに過ぎないのだ。


興味深いのは、メディアに見られるトランプ関税を語る人々の顔が深刻で青ざめている一方で、同時期に活躍したスポーツ選手らは晴れ晴れしい破顔の笑みを見せていることだ。

青ざめているのは自分を超えた力になすすべもなく振り回されている人々。破顔の笑みは自分の力で何かを達成した人々だ。投資で言えば、株式の右肩上がりを信じていた人々は青ざめ、自分の力でやるしかない短期トレードで利益を上げた人々は笑うことができている。

自然災害や天変地異などの大きなものには誰も逆らえないが、そんな中でも自分にできることを見つけて自分を磨けばどうにか活路が開けるものだ。

トランプ関税は第二次世界大戦後の、米国が主導してきた世界の変化を示唆している。言わば、米国という上からの革命なのだ。米国優位の世界が変わろうとしているのだから、下の国々が変化を嘆いても仕方がない。自国にできることを見つけて自国を磨けば活路が開けるのではないのか。

 

 


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