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☆AIと戦争
中国製の生成AI「ディープシーク」が、先週、各国の株式市場を揺るがした。
市場が驚いたのは、生成AIの訓練・改善は膨大なデータを高速処理するために、膨大な数の最高級のチップと膨大な電力消費が不可欠で、膨大な資金がなければ開発できないと思われていたからだ。
ところが、ディープシークのAIは1割以下のコストでも、最先端の生成AIに匹敵する能力があることが証明されたという。つまり、「膨大」な量だけの戦いではなく、質でも戦えることを証明したのだ。
もっとも、ディープシークは最高級ではないもののエヌビディアのチップを数多く使い、また、オープンAIのデータを蒸留処理したとも言われている。蒸留処理とは、原料データを処理するのではなく、処理済み出力データを再処理して訓練・改善することのようだ。
とはいえ、最高級ではないチップを揃えることは比較的容易で、蒸留処理を防ぐことも困難なことから、高性能な生成AIの裾野が一気に大きく広がったことになる。
また、AIの軍事利用が取り沙汰されていることから、ディープシークが中国製だということも懸念を深めた。中国企業は政府には逆らえない。このことは使用者の個人情報などが中国政府に筒抜けになる可能性も不安視されることを意味する。
日経ビジネスで、AIの軍事利用についてのコメントを目にした。以下に全文を引用する。
(引用ココカラ、URLまで)
AIの軍事利用は規制できるか? ガザで始まった「人工知能戦争」
AI活用が犠牲者の減少につながる?
AIの軍事への応用分野は、情報収集・分析、意思決定支援、自律型システム、サイバー攻撃、ロジスティクスなど多岐にわたる。これまで、人間の意思決定や操作に頼っていた戦闘行動が、AIによって部分的または完全に自動化されることで、迅速かつ正確な判断が可能となる。
例えば、自律型ドローンや自動化された監視システムがAIを搭載し、リアルタイムで目標を特定し、攻撃を実行に移す。これは戦場における反応速度を飛躍的に向上させ、犠牲者の減少につながる可能性がある。
しかし、その一方で、AIの誤作動やアルゴリズムの偏りによる誤判断が深刻な被害を引き起こすリスクも無視できない。無人兵器が誤って市民を攻撃するような事態が発生すれば、国際法違反や人権侵害につながる可能性がある。また、AIを利用した戦争が拡大することで、国家間の緊張が高まり、AI技術が軍事競争を激化させるリスクも存在する。
このようなリスクを防ぐため、AI技術の利用に関する国際的な枠組みが必要とされており、各国が協力して技術の適切な使用を推進することが重要である。
イスラエルによる「初の人工知能戦争」
実はAIの軍事利用はすでに現実のものとなっている。特に、イスラエルは長年、ガザ地区を新しい軍事技術の実験場として利用しており、AI搭載の兵器システムもその一環である。
特に注目されたのは、2021年5月に行われたイスラエルの「ガザ侵攻」で、これは「初の人工知能戦争」と呼ばれている。イスラエルメディア「+972マガジン」は、イスラエル国防軍がAIを搭載した「Lavender(ラベンダー)」や「Gospel(ゴスペル)」と呼ばれるターゲティングシステムを使用したと報じている。
これらのシステムでは、大量の監視データを分析し、イスラム組織ハマスの戦闘員と疑われる人物を割り出し、攻撃目標を設定するために使われているという。ラベンダーは個人を、ゴスペルはインフラ施設をターゲットとしており、リアルタイムで人やインフラなどの攻撃目標を自動的に生成できる。
しかし、これらのシステムは完璧ではない。ラベンダーはハマス関係者を特定する際の誤認率が10%であったにもかかわらず、イスラエル国防軍はラベンダーが自動で作成した「殺害リスト」を、あたかも人間の決定であるかのように自動的に採用することを全面的に承認したという。
つまり、AIが自動で生成した攻撃対象のリストを人間が確認することなしにそのまま採用し、誤って武装組織とは無関係なガザ市民を攻撃した可能性があるということだ。もし、これが事実であれば、倫理的にも人道的にも許されることではない。
また、こうしたAIによる意思決定プロセスは、人間の判断を排除し、大規模な破壊と殺戮(さつりく)を「客観的なアルゴリズムの結果」として正当化する危険性もある。
「第3の軍事革命」が招く国際不安
AIの軍事利用に対する国際的な懸念は、2023年12月に国連総会で採択された「自律型致死兵器システム(LAWS)への対応が急務」という決議によって強調された。この決議では、AI兵器が国際法に従って使用されることを確認しつつも、これが新たな軍拡競争を引き起こす可能性について警鐘が鳴らされた。
国連決議には、日本や米国を含む152カ国が賛成したものの、ロシアやインドは反対し、中国やイスラエルは棄権した。特に、イスラエルはガザ地区でのAI兵器の実用化を進めていることから、この技術に対する規制に慎重な立場を取っている。
AI兵器が「第3の軍事革命」とも称される中、こうした技術の制御が困難であることが、国際的な不安を煽(あお)っている。
国際的な合意にも限界
2024年9月に韓国ソウルで開催された「Responsible AI in the Military Domain(REAIM:軍事分野における責任あるAI)」サミットでは、AI技術の軍事利用に対する国際的な規制強化が主要なテーマとなった。このサミットでは、「Blueprint for Action(行動のための青写真)」が採択され、AI技術が人権や国際法を侵害しない形で使用されるためのガイドラインが示された。
特に、核兵器の使用に関する意思決定に人間の管理と関与を維持することの重要性が強調された。
しかし、この合意には法的拘束力がなく、日本、米国、英国、オーストラリアなど60カ国以上が署名したものの、中国やロシアを含む主要な軍事国は署名を見送った。これにより、規制の実効性が疑問視されており、特に署名を拒否した国々が独自に軍事AI技術の開発を加速させる可能性が懸念されている。
混在する平和利用と軍事利用
AI技術は、その二重用途性(デュアルユース)により、平時の民間利用と戦時の軍事利用が容易に混在する。例えば、AIを搭載した自動運転技術やドローンは、物流や医療救援に貢献する一方で、戦場での兵器としても活用される。このため、AI技術の平和利用を推進する枠組みが必要とされているが、現状では規制の実効性に大きな課題が残っている。
さらに、グーグルやアマゾンなどの民間企業も、軍事機関に技術提供を行っていることが問題視されている。イスラエルがガザ地区で使用しているAIシステムの一部には、これらの企業のクラウド技術が使用されており、軍事目的に加担しているとの指摘もある。
これに対し、2024年5月にはグーグル傘下のDeepMindの従業員約200名が、同社のAI技術がイスラエルや米国の軍事機関に提供されていることに対して抗議した。従業員は、AI技術が戦争の手段として使われることは、グーグルの「AI原則」に反すると主張し、軍事目的でのAI技術の使用を停止するよう求めた。
この抗議運動は、企業がAI技術をどのように活用するかについて、従業員レベルでの関与が進んでいることを表している。また、技術者たちが自身の技術がどのように利用されるかに対して責任を感じていることも浮き彫りにしている。企業は、AI技術を開発・提供する際に、その利用が倫理的であるかを慎重に見極めなければならない。
一方で、グーグルはこの従業員からの抗議に対して、契約はクラウドコンピューティングサービスに関するものであり、軍事目的のAI技術の提供には直接関与していないと説明しているが、従業員たちの不安は払拭されていない。
まとめ
AIの軍事利用を防ぐには、国際社会の協力や企業の倫理的責任が必要とされる。しかし、技術の進化と各国の安全保障上の懸念が交錯する中で、すべての国や企業が同じ方向に進むとは限らない。特に、中国やロシアのように軍事技術の開発を進める国々が合意に参加しないことで、依然としてAI軍拡競争が激化するリスクが存在する。
この問題の本質は、技術そのものではなく、その技術をいかに管理し、使用するかということである。AIの軍事利用が完全に排除されることは難しいかもしれないが、国際的な協力と技術の適切な運用によって、そのリスクを最小限に抑え、安全で平和な未来を目指すことが可能であると信じたい。
参照:AIの軍事利用は規制できるか? ガザで始まった「人工知能戦争」
上記のコラムでまず気になったのは、「2021年5月に行われたイスラエルのガザ侵攻」という部分だ。何故なら、イスラエルのガザへの報復攻撃を正当化した「ハマスがイスラエルを越境攻撃したのは2023年10月」だからだ。
そして、イスラエルのAI兵器はハマス関係者を特定する際の「誤認率が10%」であったにもかかわらず、イスラエル国防軍はラベンダーが自動で作成した殺害リストを、あたかも人間の決定であるかのように自動的に採用することを全面的に承認したという点だ。
また、2023年12月に国連総会で採択された自律型致死兵器システムへの対応が急務という決議には、日本や米国を含む152カ国が賛成したものの、「ロシアやインドは反対し、中国やイスラエルは棄権」した。特に、イスラエルはガザ地区でのAI兵器の実用化を進めていることから、この技術に対する規制に慎重な立場を取っているという。
加えて、AI技術が人権や国際法を侵害しない形で使用されるためのガイドラインには、日本、米国、英国、オーストラリアなど60カ国以上が署名したものの、「中国やロシアを含む主要な軍事国は署名を見送った」という点だ。
これだけを見れば、正義の味方は日本や米国で、ロシア、中国、インド、イスラエルなどは悪者だと理解できる。
私も、ロシアや中国、イスラエルは明らかに正義の味方ではなく、インドも怪しいと思っているが、一方で、米国も明らかに正義の味方ではなく、日本も怪しいと思っている。
例えば、2023年12月には以下のような記事がニューヨークタイムズに載っていた。
「米国、国連安保理のイスラエル・ハマス停戦決議に拒否権発動。米国は金曜日、ガザ地区での即時停戦を求める国連決議に拒否権を発動した。ガザではイスラエルが何百回もの空爆を行っており、救援活動が頓挫し、人々は基本的な生活必需品の欠乏に絶望するあまり、援助隊に石を投げつけたり襲撃したりする者も出てきている。
しかし、安全保障理事会の常任理事国5カ国の1つである米国は、イスラエルにはハマスの攻撃から自国を守る権利があるとして、決議を阻止した。投票では賛成13対反対1で、英国は棄権、フランスなど米国の同盟国の一部は停戦に賛成した。」
参照:U.S. Vetoes Israel-Hamas Cease-Fire Resolution at U.N. Security Council
その後もイスラエルは無抵抗となったガザを攻撃し続け、全土をほぼ瓦礫化し、死傷を免れた人々をも飢餓状態に追いやっているが、米国はイスラエル支持を続けている。
これでは、米国などが署名するAIの軍事利用規制は人道面からではなく、かつての列強諸国が日本など新興国の軍拡を規制したように、核拡散防止条約が保有国の優越的な立場の維持に使われてきたように、単に「自国第一主義」を拡大利用するためだとしか思えない。
イスラエルのガザへの報復攻撃を正当化した「ハマスの越境攻撃」にも疑問点は多い。
報復後に報道されたことは、かねてからイスラエルだけでなく、米国の情報機関もハマスの動向をほぼ完璧に把握していたということだ。天井のない監獄と呼ばれる狭い地域で、電気、水道、ガス、通信をすべて握っているイスラエルと米国が、その時だけに限って、「油断していた」というのだろうか?
ハマスの急襲では、イスラエル人に多くの被害者が出た。そのことで窮地に追い込まれた人たちのなかには、パレスチナ人との共存を望むイスラエル人たちや、ネタニヤフ政権への反対勢力がいる。一方、ネタニヤフはイスラエル軍の誤爆で死んだイスラエル人たちに対しても、「人生とはそんなものだ」と発言して非難されたとされる。
そんな中、米国内ではハマス急襲の5日前に、当地で「異常事態が起きる」ことを見越して、通常では有り得ない程の大金を賭けていた人たちがいたというのだ。
「10月7日のハマス攻撃の数日前にイスラエル企業の価値が下落するとの投機が急増した。これはトレーダーたちのなかに、迫りくるテロ攻撃を前もって知り、利益にかえた者たちがいたことを示唆している。月曜日に発表された新たな調査で分かった。
コロンビア大学とニューヨーク大学の法学教授たちによる専門家同士の相互評価を得ていない予備調査は、イスラエル企業の価値に連動する最も人気のあるファンドに対する空売りが、攻撃の5日前に『著しく』かつ『異常に』急増したと詳述しているとされた」。
参照:Unknown traders appear to have anticipated October 7 Hamas attack, research finds
ところで、ガザではイスラエルとハマスの人質交換が行われている。2月1日にはハマスが人質3人を解放し、イスラエルは90人を釈放したとされる。この数値で分かるように、何回か行われた人質交換では、圧倒的にイスラエル側の釈放の方が多い。
その理由は、釈放されたハマスの1人が「いつまた監禁されるか恐い」と語った言葉で理解できる。
2023年10月7日以前からガザは「天井のない牢獄」だった。国境は封鎖され、域内での行動は監視され、そこから脱出することは不可能に近かった。とはいえ、ハマスの武装勢力は地下道を張り巡らすことで、イスラエルのAI兵器からも逃れてきた。
今、イスラエルから釈放されたハマスのメンバーは、イスラエルに協力することを約束したのでなければ、屋根付き食事つきの監獄から出ただけで、雨風を凌ぐ屋根も、食料を得る十分な農地も、隠れる地下道もなく、徒歩以外の移動手段もほぼなくなった「瓦礫だけの監獄」に移されたに過ぎない。
そうしたガザを含め、現代の世界で行われていることは、日本の戦国時代にそうであったような建前と駆け引き、調略や扇動、実際の武力行使などだ。そこでは核兵器もAIの軍事利用も、またそれらの使用規制も、自国、あるいは自己の政権を有利にするためのものでしかないのではないか?
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