オトナとして落ち着きを維持するのは重要ですが、例えば“売買マシン”のような状態、まるでゴルゴ13のようにシゴトをこなすなんて絶対にムリ!
だって、「カネがほしい」と思っているからトレードしているのであって、百戦錬磨のプロでも、絵に描いたような“賢者”ではありません。気持ちは俗っぽいままで、勝てば「よっしゃ!」と笑みを浮かべるし、負ければ「チクショー」とコドモのように悔しがるのが自然なのです。
ただ、そんなふうに感情を丸出しにしたとしても、わるい結果に直結させなければいいのです。淡々と売買する姿勢を固めておけばいいのです。
そのために、資金管理を考えたり、ポジションサイズ(株数)を丁寧に決めたり、そんな地味な作業を日々やっているのです。
そんな地味な作業の結果、トレードの「枠」が出来上がります。
「この枠から出たらダメだよ」ということですが、逆にいえば「この枠の中にいる限り、なにをしても大丈夫」ということです。
日常の行動、例えば、歩く、しゃべるといった動作は、誰でも上手にこなします。
でも、「はい、カッコよく歩いて」とか「この文章を感情を込めて読んで」などとリクエストされると、意外なことに、驚くほどギクシャクして、おかしなパフォーマンスになるでしょう。レベルが上がるどころか、ふだんできていることすら全くグズグズになったりします。
そんなギクシャクが起こらない、でも歯止めなく暴走することもない──そのために「枠」を設定するのです。
「枠」の中にいれば安全なので、感じるまま、思うままに行動できます。
自分で決めた細かいルールは守りますが、自由闊達(かったつ)に行動します。
それが、自然な行動とよい結果に結びつくはずです。
こういった「計算」の中にいるのなら、感情的な「ワクワク」も暴走につながらず、むしろ“自然な流れ”を生むと期待できます。
このように、生身の人間であることを前提にトレードを考えていくのが正しいと、私は確信しています。
ワクワクしたら出動する、ワクワク感が薄かったら出動しない、ポジションを維持しているうちにワクワク感が減退したら手仕舞う……適切な「枠」が設定されていれば、ワクワクを軸にすることで、十分に活動的、かつ丁寧な売買が展開されるでしょう。
好きな女性がいたからといって、いきなり抱きついたりしたら嫌われます。
そもそも犯罪です。
日常ある「この銘柄いいかも!」という思いつきは自然なこと、「この女性とつき合いたい」という本能による反応と同じです。
だからといって、コーフンして「バシッと張ってやる!」なんてノリは、期待する結果を生むはずがないのです。
ルールはあってもマナーが存在しないのが株式市場という場ですが、自分なりの美学で独自のマナーをもっていないと、相手(株価)に嫌われてしまうのです。
まずは、やさしくデートに誘いましょう!
将来の株価なんて誰にもわからないので、現時点で値段がついている(売り買いが均衡している)状態を、独自の観点で分析し、「上がる」とか「下がる」と見通しを立てるだけです。
だれがやっても当たったり外れたり……サイコロをころがすのと大差ないのです。
結果は、スタート後のポジション操作、「対応」で決まります。
ダメなときは、ポジションを早めに切ってしまうことで、負け勝負に時間を費やすことなく、損を小さく抑えることもできます。
でも、うまく乗れたときは、時間をかけてもいいからねばり、“利を伸ばす”よう努めます。
大化け銘柄を当てたとしても、取れなければ意味がありません。
自分の意思でポジションを維持する、つまり「育てる」必要があるのです。
それを実現するために、手法を考える、緻密に「枠」を設定する、そのうえで“ワクワク感”をないがしろにしない、といったプロの姿勢が、マネすべきお手本なのです。