リスクの計算、資金管理、ポジションサイズ、ドローダウン(一時的な評価損)……80年代のバブル期とは比べものにならないほど、売買を考えるための言葉は豊富になりました。
論理的、科学的な発想があります。
でも、机の上の計算に傾きすぎている人も多いようです。
例えばトレード結果の評価で、「3カ月で資金が10%増えたから、次の3カ月はトレードサイズも10%増」なんて計算は、通用するとはかぎりません。
「勝つことが前提でトレードすると考えて、差し支えないんですよね? だったら、10%勝って資金が増えたんだから、また10%勝つ前提が正解。資金が10%増えた分、トレードサイズも大きくするのが当然じゃないですか」
こんなふうに反論されるのですが、前提の部分にムリがあるのです。
現実では、勝ちと負けが混在します。
「勝つことが前提」とは、「一定期間が経過した時点で損益がプラス」ということですよね。
でも、10%勝った3カ月が、想定する「一定期間」なのでしょうか?
3カ月で10%勝ったあと、次の1カ月で5%負け、「トータル4カ月で5%の勝ち」が本来の「一定期間の結果」かもしれないのです。
こういった可能性もあるので、ドローダウン(一時的な評価損)を考えておくべきですが、「一時的なプラスを過大評価しない」という発想も同時に生まれるはずですよね。
これを踏まえ、ホンネを言える立場のプロが「生き残り」とか「負けないやり方」といった言葉を並べても、ワクワク感がなくてウケません。
でも、こういう部分にこそ耳を傾けるべきなのです。
目の色を変えて銘柄情報を探す路線とは、ベクトルそのものがちがう世界です。
小銭ならぬ大銭(おおぜに)を失うことを避けないと、勝つチャンスはゼロになります。
だから私も、「こんな注意事項ばかり書いたら、読む人が減るんだよね……」と思いつつ、やめることができない、いや、そういったことがトレードの本質を形成しているというのがホンネなので、“ウケ狙いの芸風”に変えるつもりはありません。
ただ、禁止事項ばかり並べても、ムリなダイエットと同じで、結果につながりません。
ワクワク感、適度な笑い、かるく“遊び”を入れる楽しみ──大切なカネを扱うトレードであっても、いや、トレードだからこそ、こういった要素が不可欠ではないでしょうか。
かるい緊張感があるものも、自由にのびのびと行動するのが理想です。
でも、常識的な人が“のびのび”行動すると自動的に“やりすぎ”になるので、ストイックなイメージで狭めの「枠」を設定します。一定の禁止事項によって、限度を設定するのです。
その枠の中では、自由闊達(かったつ)に、感じるままに行動できます。「よし、ここは少し早めに買って……」みたいな遊びも交えて、創造力を発揮することができます。
「銘柄の選び方」と、セットで考える「資金管理」の問題も、プレーヤーとしてチカラを発揮するための思考です。
事前にガッツリと考えておき、売り買いの決断はサッと行うのがベストです。
サッカーならば、練習のことは忘れ、今その場で得点することだけを考えるべきです。試合中にドリブルの足運びなんて考えていたら、シュートのチャンスは生まれません。