「在庫不足」にするのが株売買の最大のコツ | 林知之


「資金管理」という言葉を使っても、ほとんどの個人投資家は食いつきません。

市況解説なら抱えている不安解消のためにチェック、銘柄情報ならワクワク感満載──これらと真逆に位置するのが、資金管理を考えることなのでしょう。

でも、マーケットで大勢の参加者と競争して上位にいくために、資金管理を考えるのが意外と近道なのです。

売買していると、どうしてもポジションが増えてしまいます。
「これ安いな」なんて、なんとなく手を出したものが残って、余裕資金が少なくなりがちです。誰がやっても、そうなるでしょう。

つまり、一定のポジションがあって「もっと資金がほしい」という状態は当たり前、「資金が余って仕方がない」なんて状態にはならない、ということです。
ここが大きなポイントです!

予測の精度、細かいポジション操作など、ほかの参加者に勝つための要素はさまざまですが、それらのワザを自由にくり出すには、資金に十分な余裕があること、余裕がない状態に近づかないことが不可欠の条件なのです。

では、この観点を現在の相場に当てはめて考えてみます。

見ている範囲や実践しているやり方によって認識は異なりますが、私の場合、中源線の売買で大きく伸びる銘柄を買っていて“いい感じ”な一方、裁量で売買する低位株群はまだまだ動意づいていない状況です。ジワッと好転しているのですが……。

この、「あと少しで攻め時か」という状況では当然、「どこでGOサインを出すか」と気持ちが高まりつつあるわけですが、「どんな売買を計画しておくか」という具体的な部分を考えてみてください。

私の場合、抑えているとはいえ、ある程度まで買いポジションを持っています。
だから、GOサインと思ったら単純に買い増しすればいいのですが、あえて、手仕舞い売りを先行させたいと思うのです。

実際は、単純な買い増しをするだけかもしれません。
だから、ちょっと大げさな表現ですが、イメージは「手仕舞い売り先行」です。

「よし動こう!」と思ったときにポジションを増やすだけだと、「資金不足に陥る」懸念を常に抱えることになります。だから、「よし動こう→積極的に動くための余裕をつくる」というイメージを大切にしたいのです。

駅前の店を運営している、と想像してください。

商品を仕入れて棚に並べますが、棚に並べて来店客にみせることが目的ではありません。その人たちに「買ってもらう」ことが目的です。

豊富な在庫が棚にきれいにディスプレーされている状態よりも、どんどん売れて棚がスカスカ、お客さんに聞かれて「すみません、仕入れますから予約してください」とぺこぺこ謝っている状態のほうが望ましいわけです。

株式投資で、持ち株は十分にあるけど、グイグイ上がっている素晴らしい銘柄はなくて、一部は塩漬け的な状態……これは、店に当てはめると、「バンバン仕入れて棚に並べているけど、グイッと売れる商品は見当たらず、一部の商品はたぶん売れそうもない」というトホホな感じですよね。

手仕舞い売り先行、在庫不足に近づける──これが、株式投資の大きなコツです。

そのうえで、予測とか売買の細かいワザが生きてくるのです。

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