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連載「トレード哲学」……16
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「熱湯」とは、沸騰している湯(約100度)を指します。
でも、テレビで芸人が入る「熱湯風呂」は、ギリギリやけどにならない53度が限度で、温度調整が難しいから実際には冷めていたりするとか……。
まあ、どうでもいいことですが、この場合の「熱湯」が意味するのは、“風呂としては考えられないほど熱い”ということです。でも、こんなふうに理屈を考えると、面白いものも面白くなくなりますね(笑)。
金融機関で働く人は、多くの人の財産を扱う立場上、一定の制約を受けます。
例えば証券会社の職員ならば、
「もっぱら投機的な利益を目的に売買してはいけない」
などと決められています。
「投資ならばいいですよ」というのが原則なわけですが、では『投資と投機のちがいは?』と問われたら……答えられますか?
「さわかみファンド」で知られる澤上篤人氏にインタビューした時、次のように言っていました。
「リスクを取るのが投資。リスクをコントロールするのが投機だ」
別に、私にだけ語ったことではないので、澤上氏の著書やブログにも登場する表現ですし、「私を含めた投資家はリスクを取っているのです」という部分が趣旨なのでしょうが、「投機=リスクをコントロールする売買」という定義は実に面白いと思うのです。
情報があふれる現代、自分が確信をもてる定義、情報の捉え方、行動スタイルの決定……丁寧に考えたうえで、自立した姿勢を貫きたいものです。
自由に売買を展開できるのが株式市場という場です。特に個人投資家は、銘柄も、期間も、具体的な方法も、いっさい制約を受けずに自由なのですから。
そんな自由があるにもかかわらず、つい慌てて「今なにを買えば儲かるの?」と考えがちですが、大切なカネのことなので、たまにはちょっとだけ立ち止まり、ワクワク感を捨てて面白くないことを考えてみてはいかがでしょうか。
新刊『うねり取り株式投資法 基本と実践』の第7章「トレードは常に自分が中心」は、メンタルを含めた“市場との向き合い方”を考える内容です。その章から引用します。
トレードはズバリ、カネの問題だ。売買の対象は「株式」だが、価格の変動を追う立場では、株を買う=株主になる、との認識は薄い。買っている期間に株価が値上がりすればいいだけだし、下げるときはカラ売りすればいい。
つまり、単に“カネを殖やすための対象物”だ。
「株式投資」という言い方が一般的で、本書でも使っているが、うねり取りでは数カ月の価格変動を見るだけだから、純粋には「投機」なのである。
株式は、株式会社に資本を提供する仕組みだ──この説明は、トレードの実践とは離れた知識の領域にあることだ。
株式市場において、投機家たちがやり取りしているのは、「株式」というよりは「カネ」である。カネが直接的に飛び交っているという表現が現実に近いのだ。
(引用終わり)
楽しみ、ワクワクする気持ち、多少の興奮……これら“感情”を動かすものがないと積極的に行動できないのが人間ですが、カネの問題である以上、いちど付随的なものを片っ端から取り除いて考えてみるべきです。
そんな、ストイックな姿勢を追究したのが、プロが好む「うねり取り」です。