計算ではない計算(1)
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ルール通りに実行するのは難しいものですが、適切な応用もイバラの道です。
昔読んだマンガで、たしか「がきデカ」の作者、山上たつひこ氏の作品だったと記憶しているのですが、料理のできない男が集まってちらし寿司を作るというもので、全員でレシピを読みながらドタバタと進んでいく中、生シイタケを用意したのに「干しシイタケを水でもどす」と書いてある……急ぎ屋根に上ってシイタケを干すというくだりが、今でも印象に残っています。
中源線建玉法では、トレンドの判断と3分割の売買が規定されています。
いわゆる「機械的売買法」なので、パラメータ設定や銘柄選定のあとは人間の感覚を持ち込まないのが本筋の使い方です。
でも、中源線の原典である『新版 中源線建玉法』では、応用の使い方にも触れていますし、応用を考えるべきだとも述べています。
まず、ルールを記した「第二部 本文」には、次のように書かれています。
「陰陽転換時、規定により2/3の建玉をした場合でも、3/3を超える建玉は不可」
ポジション操作は3回の等分割で、1/3ずつ建てるのが原則ですが、状況によっては最初に2単位(2/3)建てることが規定されています。この規定が、人間の感覚を満足させてくれるユニークな存在で、極めて地味なポジション操作を軸としながらも、相場を張る感覚、人間くさい行動を盛り込んでいる部分なのです。
でも、例外なく「3/3」が上限である、と明言されているわけです。
つい興奮して、自分で決めたルールをゆるめてしまう、“攻め”が強くなりすぎてしまうのが、相場あるある、大失敗の元凶なので、とても大切な考え方です。
ところが、「第四部 実践と実験」には、次のような実例が紹介されています。
「A口座は中源線の規定通りだが、B口座は中源線の補助、併行した売買を行う。例えば、B口座は、中源線と自分の相場観が一致したときに建てる、利益確保のツナギ玉を建てる」
(要約して引用)
ルールを曲げて利益率が上がるなら、危険性が過度にならないなら、ルールそのものを変えるべきです。そうしないと、ルールがあってないような状態、いつもその場限りの気分で売り買いするようになってしまいます。これが原則論。
一般的なシステムトレーダーたちも、同じように考えるでしょう。
しかし、極めてシンプルなルールの中源線を“ツール”として使いこなすうえでは、上記のような裁量の入れ方もあるということです。実に面白く、とてもワクワクする部分ですが、いきなり挑んだら大混乱するでしょう。
では、どんな手順が必要か、どのような心構えが欠かせないか──そんな悩みに答えるのが、新刊『入門の入門 中源線投資法』の大きな狙いのひとつです。
その結果、相場そのものを考える読み物としても、読み応えのある一冊になったと自負しています。
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林 知之