連載「相場のこころ トレードの本質」その15 | 中源線研究会

値動きを集約する
 
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懐かしき昭和の時代、自宅では“名詞”を数個しか使わない亭主がいましたね。
奥さんに、「メシ」「風呂」「新聞」「お茶」と名詞を言うだけ、ニュース番組が見たいときは「おい」と言ってあごでテレビを指すだけ。
警察、消防、航空、どんな分野の無線連絡よりもムダのない究極のカタチ!
やたらと“紳士”の対応が求められる現代、逆に「カッコいい!」なんて言われるかもしれません。可能性にかけてみたい人は、自己責任で挑戦してください。
 
中源線建玉法では、数カ月の波を見るために日足を使います。
でも、日本で最も利用率の高いローソク足ではなく、日々の終値だけを線で結ぶ「折れ線チャート」です。
 
ちなみに、ローソク足が一般的なために「日足=日足のローソク」という認識があるようですが、違います。「日」はチャートの区切りの期間を示し、「足」はチャートという意味があるだけ。日足にも、さまざまな種類があるのです。
 
終値の折れ線チャートについては、終値だけなの? 形を見て判断する要素が足りない……等々、疑問をもつ向きも多いでしょうが、情報をそぎ落としているところに意味があるのです。
 
例えば、現代のネット社会の弊害は、「情報過多」による混乱です。
情報が多いのは悪いことではない、しかし、選択肢が多すぎて迷う、動けない、決断できないといった状況に追い込まれ、思考停止するケースが実に多いのです。
 
米大統領選の前後を思い出してください。
クリントン氏が当選だろう、トランプ氏が当選したらショック安……ところが、トランプ氏が当選したあとは、まるで雨上がりのように相場が明るくなりました。
今度は“トランプ相場”なる表現が飛び出し、多くの投資家は「トランプ相場は続くのか」と不安を抱えて情報を集めながら、決断力を鈍らせています。
 
日常の仕事や家事でも、全く同じです。
情報をたっぷりと抱えながらも、選択肢を絞り込むことで行動を決めています。実は、かなりシンプルな基準で、多くの選択肢をバッサリと捨てているのです。1日の仕事のスケジュールを決めるのに1時間かけたり、晩ごはんの買い物に2時間を費やすことなどできないからです。
 
材料を集めて先行きを当てる……これが、株式投資に対する多くの人のイメージです。
でも、決め打ちして何カ月も結果を待つのが相場ではありません。今日決めたことを、翌日に覆してもいいのです。一気にやろうが少しずつやろうが、すべて自由です。
だから、日々の上げ下げに目を向けるよりも、チカラを抜いて、大ざっぱな株価のトレンドを見るべきなのです。
 
少なくとも、絶対に知ることのできない未来を考えることなど、やめるべきです。
 
ローソク足では、隣り合う2本、3本の組み合わせである「線組み」を観察します。
そこには、統計で裏付けられた一定の確率があり、私たちの最大の関心事である「トレンドの変化」を見出すことにつながるのです。でも、結局は当たったり外れたりという現実から大きく離れることはできません。
 
1本の線に多くの情報が盛り込まれたローソク足を使うことで、短期間の動きしか見なくなり、本当に必要な情報を捨ててしまっているケースが多いと思います。
 
情報は集めるものではなく、自分の行動スタイルに合わせて取捨選択するものです。
プロが好む、終値の折れ線チャートの効果に、ぜひ目を向けてみてください。
 
以下、中源線の書籍からの引用です。
 
値動きを集約するために1日に一値(ひとね)のみを記録する。その一値は1日の最終の値を用いる。そして、毎日の値をグラフ用紙に点として描き、線でつなぐ。
(『新版 中源線建玉法』第二部 本文より)
 
冗長な説明はありません。
「集約する」という表現に、実践家のこだわりを感じます。
 
 
林 知之

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